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桜の咲く季節に京北の歴史と春を楽しんで

常照皇寺と黒田百年は残念ながら美しいを楽しむことが出来なかったのだが、山国護国神社の次に訪れた福徳寺(京北下中町寺ノ下 ☎0771-54-0971)のはちょうど見頃を迎えていた。

福徳寺のかすみ桜

福徳寺は曹洞宗の寺院で、寺伝では和銅四年(711)に行基が創建し、弓削道鏡が七堂伽藍を整え弓削寺と称して、現在地より北へ数百メートル先の大谷口にあったとされるのだが、応永三年(1396)の火災に遭い、再建されたものの周山城築城の用材調達のため、明智光秀により破却されてしまう。天和元年(1681)に再興され、富春庵(ふしゅんあん)と称したが、明治十五年に福徳寺に改称したという。
建物は古くないのだが、保存庫には平安時代に制作された薬師如来坐像、持国天立像、増長天立像が安置されておりいずれも国の重要文化財に指定されている。
京都観光Naviのサイトによると、予約すればこれらの仏像を拝観できると案内されているが、予約を申し出る先は永林寺(☎075-854-0654)と記されている。
http://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=1&ManageCode=1000439

予約していなかったので仏像の拝観はできなかったが、庭は自由に散策が出来る。
上の画像は「かすみ」と呼ばれる枝垂れで、京都市の天然記念物に指定されている。

京北町の出会い桜 2

福徳寺から国道162号線に出て1kmほど北に進むと大きな鳥居があり、その奥に「出会い桜」(京北上弓削町弾正42)と呼ばれる大きな桜がある。上の画像は鳥居側から写したもので、下の画像は坂道の上から撮った画像である。

京北町の出会い桜

鳥居があるということは、以前はこの道は神社の参道であったということなのだが、坂道を登っていくと京北第三小学校の運動場に突き当たってしまう。

出会い桜と佐藤藤右衛門の桜と弓削八幡宮の地図

Google Earthで確認すると、神社の参道を取壊して小学校の敷地を作ったということが誰でも分かる。

弓削八幡宮社の御神木

その小学校の校庭にかなり大きな杉の木があり、調べると樹齢450年、幹回り6.31m、樹高32.5mで、旧京北町の天然記念物に指定されているようだ。しめ縄が張られているのは、近くの弓削八幡宮社の御神木だからである。

Google Earthの画像の上に、以前は弓削八幡宮社に向かう参道であったと思われるところに線を引いてみた。右の道路は国道162号線で、鳥居のある近くに「出会い桜」があり、鳥居から御神木の杉の木の延長線上に神社がある。
昔の弓削八幡宮社の境内はもっと広くて、参道の左右には立派な木々が林立していたと思うのだが、今の参道には本殿に向かう神々しい雰囲気がすっかり失われてしまっているのは残念なことだ。

国立国会図書館デジタルコレクションの『京都府北桑田郡誌』には、弓削八幡宮社についてこう解説されている。この地域も皇室とのつながりの濃い地域であったことが窺える。

「弓削村大字上中の丘上にある郷社にして、応神天皇を祀り神功皇后および湍津姫命(たきつひめ)を配祀す。社伝によれば本社は孝謙天皇の御代に勅命を以て宇佐八幡宮を勧請せられ、清和天皇の貞観元年今の地に奉祀せられしという。往古は弓削全郷の産土神としてあつく尊崇せられ、中道寺これが神宮寺としてその住僧別当職にあたる例なりき。…
 維新前までは旧例古格厳存し、村民はいずれもここに参拝し、家格を以て席次を定め、いわゆる郷飲の遺式を存したりしが今は廃せられぬ。当日は氏子中より幼齢の男児を選出して稚児とし、束帯騎馬にて神輿に供奉せしむ。これ、古昔勅使参向の風習を存せるものなりという。由来弓削村は天皇御即位の大礼を行わせらるるにあたり、大嘗会の主基田*(すきでん)を勤仕せしこと屡次にて、現に村内小字に公免租と称するところがあるが如き、その一証ならずとせず、而して之に関し宣旨講と名付くる風習を持続することは特筆すべき値あらん。
八幡神社の氏子たる下弓削、下中、上中には宣旨講なる会式あり。…宣旨講関係の古記録を閲するに、各村より十名宛の交代担当者氏名及び年号を記載し、之によりて建武の昔に泝(さかのぼ)ることを得、爾来断続して明治維新に及べり。此の行事は毎年十月七日(陰暦)に新穀を調整して、当氏神および山神に供進し、厳粛なる式を挙ぐ。之を推するに、主基御料米供進の記念式祭たること疑うの余地なからん。」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/925931/152
*大嘗会の主基田:天皇が即位の礼の後、初めて行う新嘗祭を大嘗会(だいじょうえ)といい、その際に皇室ゆかりの神々にお供えすることになる稲を育てる田を主基田(すきでん)という。

古記録で確認できるだけでも後醍醐天皇の時代から明治維新まで、天皇の即位の礼のあとの大嘗会に供えるお米を何度もこの地域で作ってきたのだが、東京遷都でその名誉ある歴史が途絶えてしまったということのようである。

弓削八幡宮社

上の画像は弓削八幡宮社の拝殿と本殿(京都府指定文化財)である。

弓削八幡宮社 懸仏

「京都市情報館」に、この神社が神仏習合であった時代の室町時代の懸仏(京都府指定文化財)の写真が出ている。径60センチメートルというからかなり大きなものである。こんな立派な懸仏があったということは、昔はこの地域が豊かであったということだろう。
http://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000196522.html

弓削「佐藤藤右衛門」の桜

上のGoogle Earthの画像で下に○印をつけておいたのだが、弓削八幡宮社のすぐ南に桜の名所がある。民家の庭に咲く枝垂れ桜だが、京都市東山区にある国名勝の円山公園に咲く名木を、桜守「第15代目佐野藤右衛門」が移植したものだという。
こんな桜が民家の庭でのびのびと花を咲かせるのは田舎ならではの風景である。訪れた時は開花したばかりであったが、4月20日の段階で5分咲きと出ているので、今週末の22日頃にはそろそろ満開を楽しめるのではないか。もし京北に行かれる場合は、前回の記事でも紹介した京北の日々の桜情報を発信している次のURLを事前にチェックされることをお勧めしておく。
http://keihoku.sakura.ne.jp/%E4%BA%AC%E5%8C%97%E3%81%AE%E6%A1%9C%E6%83%85%E5%A0%B1/

中道寺

八幡宮社から800mほど離れた場所に中道寺(京北北上中町筒江口8 ☎0771-854-0737)がある。
寺伝によると天平勝宝三年(751)に孝謙天皇の勅願で創建され、弓削八幡宮社の神宮寺であった由緒ある寺なのだが、明治6年に失火し今の堂宇はその後再建されたものである。
しかしながら木造増長天立像(国重文、平安時代)や木造阿弥陀如来坐像・木造薬師如来坐像・木像十一面観音坐像(いずれも明治初期の神仏分離により八幡宮社より遷されたと伝えられる。市有形文化財、鎌倉時代)など価値ある仏像を所蔵しているという。
残念ながらこの寺は普段は公開されていないようなので、次の目的地に進むこととする。

花降る里けいほくSAKURAめぐりマップ

これから後は、前回記事で紹介した『花降る里SAKURAめぐりマップ』をたよりにして、京北の桜の名所を訪ねていこう。
http://www.city.kyoto.lg.jp/ukyo/page/0000178772.html

弓削川沿いの桜並木

上の画像は弓削川に架かる矢谷橋付近の桜(京北下弓削町川ナ辺)。川べりの桜並木は決して珍しくはないのだが、空と川と桜と山が空間を支配するこのような景観を楽しめる場所は、都心部で探すことは難しい。

東光寺の桜

上の画像は東光寺(京北熊田町宮ノ前4)の桜。

王林寺の一本桜

上の画像は玉林寺にある(京北栃本町西町49)の一本桜。

栃本の百本桜

桂川の流れに沿って咲く、栃本の百本桜もなかなか良い。

魚ヶ渕の枝垂れ桜

上の画像は魚ヶ渕の枝垂れ桜(京北周山町渕ノ上)。

魚ヶ渕の吊橋の桜 2

もう少し東に進むと、魚ヶ渕釣り橋の桜がある。
最後の目的地にこの桜を選んだのは正解だった。この枝垂れ桜は枝ぶりがよくて、何処から見ても絵になる。5分咲き程度でこんなに美しいのだから、満開ならどれほど素晴らしいことかと思う。

魚ヶ渕の吊橋の桜

近くに「京北十景 魚ヶ渕の釣り橋と桜」と書かれた道標が建っていた。調べると「京北十景」には、前回の記事で書いた常照皇寺と今回の記事の冒頭の福徳寺の桜と、魚ヶ渕釣り橋の桜が入っているようだ。

子供の頃、4月に道端に咲く桜を見ながら小学校に通った記憶があるが、昔は京都に限らず多くの町で道に桜の木が植えてあって、桜の花を身近に楽しめる場所がいくらでもあったのだが、実家の近くの桜の木はずいぶん昔に伐り取られてしまい、無味乾燥な舗装道路に変わってしまった。
私の自宅の近くにも大きな桜の咲く場所がいくつかあったのだが、いつしか伐り取られてマンションが建ったり、隣地や境界線をはみ出して延びている枝が伐採されて、毎年窮屈そうに咲いている。千里桜通りの桜並木も随分大胆に枝が伐られてしまって、今年は随分花付きが悪かった。

昔から「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉があって、桜は枝を切るとそこから腐りやすくなるので、桜は切るものではないと伝えられてきたのだが、その言葉は都会では無視されていると思うことが多くなった。桜の本来の美しさは、自由に枝を伸ばした桜であってこそ楽しめるものだと思うのだが、存在感のある桜を育てるには百年以上はかかると思われる。そこに住む人が、何世代にもわたり地域を美しくしようと考えなければ、桜は伸び伸びと育つことはないだろう。

京北の地に生まれ育ち、この地域をこよなく愛する人々が後世に残そうとした春の風景を、この地のユニークな歴史とともに、多くの人に楽しんでいただきたいと思う。

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【ご参考】このブログでこんな記事を書いてきました。良かったら覗いてみてください。

万葉集で桜を詠った作品が少ないのはなぜか
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-498.html

一度神社になった国宝吉野蔵王堂
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-85.html

吉野山の世界遺産を訪ねて~~金峯山寺から吉水神社、水分神社、金峯神社
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湖底に沈んだ「飛騨の白川郷」と呼ばれた合掌造り集落の話
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-336.html



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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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