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日露戦争後に朝鮮半島を訪れた荒川五郎の『最新朝鮮事情』を読む

前回の記事で、この時期に朝鮮半島を訪れたイザベラ・バードが、この国には内部からみずからを改革する能力がなく、外部からの改革が必要であると書いたことや、米国も英国も日露戦争の後で韓国に関与するつもりはなく、日本が保護国とすることを希望していたことを書いた。

最新朝鮮事情

ではこの時期に朝鮮半島を訪れた日本人の記録はないのだろうかと思って探してみると、当時衆議院議員であった荒川五郎氏が朝鮮半島を訪れてレポートした、『最近朝鮮事情』という本が明治39年(1906)5月に出版されていることがわかった。
Kindle版も出ているが『国会図書館デジタルコレクション』に公開されているので、PCやタブレットがあれば誰でも無料で全文を読むことが可能だ。この本に書かれている韓国の状況を現在と比較すると、この国が今も基本的に変わっていないと思うところがあって興味深い。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766869

京城 独立門
【迎恩門の柱礎(左側の2本) 右側の門は1897年に作られた独立門】

荒川氏は、日清戦争でわが国が勝利し。清国の勢力を追い出して独立国の体裁を整えた以降のこの国のことをこう述べている。

「●以前から朝鮮は殆(ほとん)ど支那の付属国と言うても可(よ)い有様で、無論支那はその政策をとって居たので、朝鮮に於ける支那の勢力と云うものは実に非常なものであった。
●ところが日清戦争で全くその勢力が転倒し、迎恩門を倒して独立門を建てるという仕誼(しぎ)となり、朝鮮の内政も大改革が行われ、朝鮮の国は大韓国と云う豪義な国となり、国王様は大韓国皇帝陛下と御立派にならせられ、皇太子様が立てられる、大韓国大皇后様も定められると云う、エライ有様になった。

●ところがこの大韓国は他の国とは違うて、その王室は決して国民とその休戚*を共にすると云うことは無く、只(ただ)貴族のみは王室と利害を共にして居るようであるが、それでも国王の信任を得たものはその恩沢にも預かって利益も享(う)けるが、その他はそうで無い。であるから、誰も彼も国王に取入ろうとして、種々に魂胆をめぐらし、運動やら紛争軋轢実に醜状を極め、隨(したが)ってその間に立って次女や宦官、官妓、巫女(ふじょ)などが旨いことをやるのである。
常民に至っては気の毒なもので、税を納めたりその他尚義務と云うものはあるけれども、権利と云うては更に無い、王室の普請やその他慶び事や弔い事など、その入用を割りつけられたりなど色々虐められることはあるが、更に王室の恩沢を蒙(こうむ)ると云うとは無い、それは実にあわれのものである。
●だから常民共が王室を見ると旅人も同様で、王室に大事があろうが一向平気なもの、更に気にもかけない。かの二十七年の王宮の事変**の時も、又三十七年、今の王宮である慶運宮が焼けたときでも、京城の人民等はガヤガヤ王門の外に集まって来て、例の長煙管で煙草をふかしながら、互いに笑いあい語り合うて面白そうに見物して居ると云う有様である。
かく云う風で上のものも下のものも、皆唯(ただ)自身の事ばかりを考えて、更に国家という観念は無い。朝廷ではドンドン租税も取り立てるが、それは国家の用にするのでは無い。国王も大臣も観察使も郡守も、皆自身の為のみを思い、吾が家を富まそうと勉めるのみである。
常民もまた国の為など云う観念は毛頭も無いので、余計に儲ければそれだけ又余計に取り立てられて手元には残らないからというので、惰(なま)けられるだけは惰け、遊ばれるだけは遊び、田や畑や山や林やなど、これを仕立てたり、手をかけて、確実な財産を作ろうなどという考えは無いらしい。この点が即ち朝鮮の今日の有様を致す所以であろうか。
●…朝鮮では階級の制度が厳格で、それは王族宮家を別にして、両班、常民、奴婢の三種に分かれて居って、己(おのれ)より以下の階級の者に対しては圧政をしても別にあやしみもせず、これを当然の事と心得て居る
両班とは朝鮮の貴族で、東班西班の両族からなって居る。東班は即ち文班で、西班は武班である。両班とも生まれながら官吏となる特権を有し、納税の義務もなく、窮すると即ち常民から衣食の料などを取り立てる権利がある。今は武班よりも文班が重んぜられて居る。」
*休戚(きゅうせき):喜びと悲しみ。幸と不幸。
**二十七年の王宮の事変:明治27年(1894)に起きた閔氏政権を倒すクーデター。大院君が日本に協力を得て政権を握るも、近代化政策を拒否し1ヶ月で摂政の座を下ろされ、東学党の農民兵を呼び込んで日本を追い払おうとしたことが日清戦争に発展した。

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766869/43

支配階層も民衆も自分の事ばかり考えて「国のため」という観念はなく、また王室に仕える貴族はともかくとして、民衆は王室に無関心であったという。
支配階層には納税の義務がないだけでなく、資金が不足するといつでも民衆から取り立てる権利を有していた。常民たちはいくら努力して富を蓄積しても支配階層に持って行かれてしまうので、仕事に精を出すことをしなくなってしまっていた。人々が働かないようでは、国が貧しくなることは当たり前のことである。
この国の近代化のためには、この国の身分制度にメスを入れなければならなかったのだが、この国の支配層が腐っていたのだから、このことを自力で成し遂げることは到底不可能であったろう。

では、この国の政治や外交については、当時においてどういう仕組みで動いていたのであろうか。
荒川氏はこう記している。

1903年 漢城(ソウル)両班の男性
【1903年 漢城(ソウル)両班の男性】

「●…王権が振るわず、紀律が紊(みだ)れて居るものであるから、ただ表面の組織がよいのみで、その実内面は全く秩序もなく、国を外国に開いてからは外務省にあたる外衙門を置き、次いで内務省に当たる内務衙門を置いて、議政六曹も空名となり、のち軍国機務所というを設けたが為、外衙門も内務衙門もまた空名となるという有様で、何が何やら更に分からないのである。
●法典でも六典條例や大典会通という成分律があって、これを誠実に実行したなら、世運の進歩に伴うて文明の政治に進むことが出来るのに、国王の意のままに勝手無紀律の事を行い、国王の一言即ち法典という有様で、この成文律は全く死文となって居る。ことに王言即ち法典というても、その実奸細の徒が賄賂を持って国王の歓心を買いなどして、以て其私勝手を為すので、真実は王言も其の精神ではないのである。

●…地方政府もまた似寄ったもので、…中央政府が腐敗するものであるから、これら地方官はただ人民の膏血を絞る道具となり、賄賂請託(せいたく)大に行われ、官職は公然売買せらるる有様で、随ってその弊を受ける人民こそ、実に天に号泣するの外訴える道も無く、憐(あわ)れの有様に陥って居るのである。」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766869/45

また法律や条約を作っても守らないというのは今も同様で、これまでわが国が条約や合意内容をどれだけ無視されてきたかは説明するまでもないだろう。
内務・外務を司る役所は存在しても名前ばかりで、国王が勝手気ままな政治をなしていたのだが、政策決定には賄賂がおこなわれていたという。その点については地方政府も同様に賄賂がおこなわれ、官職が公然と売られていたのである。

笞刑
【笞刑】

また裁判については次のように記されている。

「●朝鮮の裁判は地方の小役人や郡守県令などが賄賂を取りあげる第一の方法で、悉(ことごと)く皆、賄賂の多少で民事の勝ちまけも刑罰の軽い重いもきまると謂(い)うてよいので、総て刑事は明律及び特別に定められた法令により、又民事は大典会通並びに裁判先例によりて処断するというのは殆ど只表面のみの有様である。
●殊に小役人が賄賂をとる弊害は実にお話にならない程で、全く無罪の人でも時に捉え来たりて賄賂を責め、もし思うように賄賂を出さなければ、これを実刑に処することがある。又怨みを結んだ者に対しても時としてはこの忌まわしい手段をとることがある
●近年になってはこれらの役得を測って、その金額を前納して、その賄賂のおかげで郡守県令になる者が多く、従って彼等はその償いを得る為に、罪も無い人民をヒドイ目に遭わす者があるようになった
●処罰ばかりでは無く、朝鮮では審問も一種の刑罰であることは、丁度我が旧藩の時の通りで、疑わしいと思えば証拠は無くてもスグ捕え来りてこれを審問し、疑うて居る通りに服罪しないと、酷い拷問をして、為に死に至る者が段々ある。そこで朝鮮では一度び捕らえられたら即ち刑罰を受けたと心得、審問も裁判も拷問も刑罰と同じ事に思うて居る位である。
●もし党派争いから裁判になるというと、拷問して拷問してその敵党をして服罪するか拷問死に死ぬるの他は無い有様に陥らしめるのである。又無罪と知りつつ只賄賂をとる目的で裁判にかけられた者がその賄賂を出さない時でもまた同様の呵責に逢い、酷い拷問を受けるのである。
●又裁判中捕らえ置くその牢獄も一種の処刑で、朝鮮の監獄は朝鮮の普通民家よりも一般に狭ま苦しく汚くて、空気の流通は悪しく、家族などが差入れをしてやらなければ、一粒の食を与えられないのが常で、たとい食物を与えられることがあっても、それは極少しでとてもそれで生命を繋ぐことはできず、少し長く繋がれると、大抵は病気にかかったり死んだりするのである。
●殊に驚くべきは民事の被告人でもこれを獄に繋ぐのである。何人でも大いに賄賂を使わねばこれをゆるして貰うことは出来ない。もし賄賂を促しても出さぬ時は、親類の者を捉えて来て賄賂の引き当てにすることがある。もしどうしてもその意に従わない時は、訴訟には勝つべき者でも、永く牢屋の中で月日を暮らさねばならぬ。
●こういう有様で、罪ある者も賄賂を納ればこれを逃れることが出来、罪の無い者でも賄賂を納めねば残酷な目に逢い、理があって勝つことが出来ず、無理無法をやっても太平で横行することが出来るという有様で、これではとても国力の伸張は望むことは出来ないのみか、日に益々萎靡(いび)するのみであるから、この今王三十五年の改革に、裁判制度も日本式に改めることになったのである。」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766869/47

李氏朝鮮時代の監獄
【李氏朝鮮時代の監獄】

日本人や西洋人は「賄賂」に関して嫌悪感を抱くのだが、韓国や北朝鮮や中国は今も賄賂が横行しており、賄賂がないと何事も動かないとよく言われる。
ネットで「韓国 賄賂」をキーワードに検索すると膨大な事例がヒットするが、学校教員が保護者から受け取る包み紙だけで家が建つとか、お金があれば有罪が無罪になるというような話から、ゼネラルモーターズの正社員の地位を売るために480人が賄賂を支払っていたことが昨年末に発覚したことなど、日本人なら誰でも驚くような話がいくつも出て来る。
この国のエリート層には、昔の両班のように働かずに金が入る生活を理想とするような考え方が今も根強く残っていると考えれば良いのだろうか。

韓国W杯審判買収

その裏返しで、韓国の人びとは、賄賂で人を動かすことが出来ると考える傾向が強いようだ。
2002年のサッカーワールドカップで審判を買収したり、アメリカグレンデール市に従軍慰安婦像を置かせるために、市議を買収した話などは氷山の一角であろう。

セウォル号事件
【セウォル号事件】

2014年にフェリー船のセウォル号が転覆して300名以上の死者が出る痛ましい事件があった。この船はそもそも就航基準を満たしておらず本来は就航できない船であったのだが、海鎮海運側から約5千万ウォン(約5百万円)の賄賂を受け取った監督官庁の幹部が運行許可を出したことが問題となったという。
この事件がきっかけとなって韓国では2016年9月に「不正請託および金品授受の禁止関係法」という法律が施行されて、賄賂や接待文化が禁止されるようになったのだが、国会議員については対象外とされたことは理解に苦しむ話である。
もともと法律を守らない国なので、このような法律ができて賄賂や接待がなくなるかどうかは疑問が残るが、少しはこの国の悪弊が改善されることを期待するしかない。
http://toyokeizai.net/articles/-/130213

荒川五郎
荒川五郎

話題を荒川氏の『最新朝鮮事情』に戻そう。荒川氏はこの著書でいろんなことを観察して詳細に記録しているのだが、「朝鮮の党派」について書いているところは、今の韓国もその通りだと思った。

「●朝鮮には公党らしい党派は無いが、私党の類は沢山ある。…
●日本党とか、支那党とか、露国党とか、時により色々の名をつけるのだけれども、此れも、一時の便利都合の上からのことで、日本党とて永久の日本党でもなく、支那党とて何時までも支那党というワケではなし。
彼等の事大根性というも、別に根底のある根性でも無く、只(ただ)大国にたよって居れば自分の地位が安全であると云う所から、その時々の勢力ある、自分の都合のよいような方にたよるので、一定した主義では無い
●日本が一番勢力があれば、彼等はこれ迄の縁故や関係には拘わらないで日本について来る。しかし日本についても、そのうちで公使について居るのが地位が安全であるか、駐在軍司令官の機嫌をとった方が地位を得るによいかと、種々に思いを砕き、小策を弄し、お世辞追従をふりまくのである。もし彼等の追従お世辞でうまくおがみ倒されると、ツイ公使党とか司令官党とか云う党派ができるので、各国が互いに勢力を振えば各国党が出来、一国がその勢力をとっても、そのうちで種々の人党が出来るのである。」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/766869/48

韓国の告げ口外交

国が貧しくて、為政者も民衆も国を護る気概も無く武器もなかった当時なら、生き延びるためには強いと思う国に従属する以外に選択肢がなかったということは理解できるのだが、世界第11位のGDPの国に成長した今も、大国の権勢を笠に着て実力以上の国に見せようとする外交スタンスが続いていると考えるのは私ばかりではないだろう。

ティラーソン
【ティラーソン米国務長官と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外相】

「虎の威を借る狐」のような外交を繰り返すことはつまるところ自国の価値を貶めることであるし、そんな国が嘘で固められた歴史で自国の立場を大声で主張し続けても、いずれその主張の嘘が露呈して、世界から相手にされなくなる日が来ることになると思う。

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【ご参考】
このブログでこんな記事を書いてきました。
学校やマスコミで拡散されてきた歴史叙述のどこまでが正しいのか、考えるきっかけになれば幸甚です。

秀吉はなぜ朝鮮に出兵したのか~~朝鮮出兵1
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-188.html

多くの朝鮮民衆が味方し勝ち進んだ秀吉軍~~朝鮮出兵2
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-189.html

第二次朝鮮出兵(慶長の役)も秀吉軍の連戦連勝であった~~朝鮮出兵3
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-190.html

朝鮮戦争の緒戦で北朝鮮軍が韓国領の9割以上を制圧できたのはなぜか
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-266.html

朝鮮戦争で、国連軍を勝たせないようにしたのは誰なのか
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-272.html

スターリンが朝鮮戦争に米国を誘導したことを示す極秘文書が発見されている
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-276.html



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京都のお寺に生まれ育ち、大学の経済学部を卒業してからは普通の会社に入りました。
若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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