HOME   »  地方の歴史と文化を訪ねて   »  高知県  »  四国霊場第37番札所岩本寺と高岡神社~~高知旅行2日目その2

四国霊場第37番札所岩本寺と高岡神社~~高知旅行2日目その2

坂本龍馬記念館から高知県高岡郡四万十町にある親戚宅に向かう。

「四万十町」という町は平成18年3月に高岡郡窪川町、幡多郡大正町・十和村が市町村合併によってできた町であるが、平成17年に中村市と幡多郡西土佐村が合併してできた「四万十市」とは異なる。大雑把な言い方をすると、四万十町は四万十川の上流地域を含み、四万十市は中・下流地域を含むのだが、四万十市の中に中村四万十町があったりしてややこしい。
ついでに言うと高知県には土佐市があるかと思えば別に土佐町がある。これも市町村合併でできた名前だが、旅行者には紛らわしい。

話を元に戻そう。
桂浜から一般道で須崎市を抜けて「四万十町」に入った。窪川駅の手前を右折し四万十川を渡ると、のどかな田園風景となり、親戚の家はその風景の中にあった。

「自宅で皿鉢(さわち)料理を是非」と誘われて、生まれて初めて土佐の有名な皿鉢料理なるものを御馳走になり、新鮮な魚や自然素材を活かした料理とあふれんばかりに盛り付けられた豪華さに感激した。あまりにすごい分量でとても食べ切れず申し訳なかった。

高知・窪川・高松方面旅行 060

食事を終えてから、車で近隣の観光地などを巡ることになった。
最初に案内していただいたのは、四国八十八箇所霊場第37番札所の岩本寺。

この寺は、思ったよりも境内は狭く、本堂などの建築物もかなり新しい。

高知・窪川・高松方面旅行 065

上の写真は本堂だが、これは1978年に新築されたものである。本堂の天井には画家や一般市民が書いた575枚の天井絵が飾られている。花鳥風月の絵に交じって、マリリンモンローの絵もあるそうだが見落としてしまった。

高知・窪川・高松方面旅行 066

建物は新しいのだが、この寺の歴史はかなり古い。

天平年間(729~749)に行基菩薩が聖武天皇の勅を奉じて福円満寺を建立し、さらに「仁王経」の「七難即滅、七福即生」を祈願し、天の七星を象って仁井田(現四万十町窪川近辺)に宝福寺・長福寺などの六つの寺を建立し、合わせて仁井田七福寺と称したという。

その後弘法大師が弘仁年間(810~823)に五社五仏を建立し、福円満寺などは先の七福寺と合わせて、仁井田十二福寺と称し、五社は仁井田五社と呼ばれて神仏習合の霊場として栄えたとされる。

仁井田五社とは四万十町仕出原にある現在の高岡神社のことで、今も鳥居と社殿が五か所に分かれている。
弘法大師が高岡神社の一の宮に不動明王、二の宮に聖観音菩薩、中の宮に阿弥陀如来、四の宮に薬師如来、森の宮に地蔵菩薩を本地仏として安置したとされるのだが、神仏習合の時代はお寺と神社の違いがあまりはっきりしていなかったようで、現代人には理解しづらい。

享禄から天文の頃(1528~1555)福円満寺が火災で廃寺となり、当時金剛福寺の住職であった尊海法親王が窪川に岩本坊を建立し法灯を継がせたが、岩本坊も天正年間(1573~1592)に焼失し、僧釈長が再興して岩本寺と改称した。
以来、岩本寺が仁井田五社の別当となり、巡拝者は仁井田五社(高岡神社)の中の宮に札を納めた後、岩本寺で納経を行ったという。下の写真は高岡神社の中の宮である。

高知・窪川・高松方面旅行 086

ネットでいろいろ調べると江戸時代の承応2年(1653)に澄禅大徳という高僧の書いた「四国遍路日記」という本があるようだ。現存している最古の遍路日記だそうだが、当時は八十八箇所という番号も固まっていなかったらしい。

この本によるとこの高僧が岩本寺ではなく仁井田五社(今の高岡神社)に参拝したと書いてある。
「扨、五社の前に大河*在り、少し雨降りければ五日十日渡る事なし。舟も橋も無くして第一難所なり。洪水には五社の向かいへ坂中より札を手向け、伏し拝みて過ぐなり。折節河浅くして漸く歩渡り、東路の大井川に似て石高く水早し。渡り悪き河也。而して五社に至る、青龍寺**より是まで十三里なり。
 仁井田の五社***、南向き、横に双びて四社立ち給ふ。一社は少し高き所に山の上に立つ。何れも去年太守より造宮せられて結構也。札を納め、読経念佛して又件の川を渡りて跡へ帰りて、窪川と云ふ所に一宿す。此の所は太守の一門山内伊賀守城下也。一万石の領地也。町侍小路など形の如く也。」
*四万十川のこと **土佐市宇佐町にある36番札所 ***現在の高岡神社

お遍路さんが札所で般若心経を唱えたあとに札所のご詠歌を唱えるならわしだそうだが、四国霊場第37番札所岩本寺のご詠歌は、
「六つのちり、五つのやしろ あらわして ふかき仁井田の 神のたのしみ」である。
(六塵[色、聲、香、味、觸、法]を無くすことで、山深き仁井田郷の、五社様にお祀りしている、神様・仏様がお歓びになります)

こういう経緯は調べて初めて分かったが、お遍路さんも高岡神社にお詣りしなければ、このご詠歌の意味はよくわからないのではないか。

ところが、明治に入って神仏判然(分離)令により岩本寺は仁井田五社と分離され、廃仏毀釈で大師堂のみを残して寺領の大半を失ってしまい岩本寺は廃寺となってしまう。

一時期は御本尊が愛媛県の八幡浜に移され、37番の札所が2箇所並立していた時期もあったようである。大正7年に四国を巡礼した高群逸枝の「娘巡礼記」という本には、八幡浜の吉蔵寺に37番札所の本尊と納経の版が伝わっていることが書かれているそうだ。

高知・窪川・高松方面旅行 064

明治22年(1889)に岩本寺は再興され、それぞれの寺院の本尊を一堂に集めて一つの寺院として復興させたことから五つの異なる仏像(阿弥陀如来、観世音菩薩、不動明王、薬師如来、地蔵菩薩)を全て本尊としているそうだ。ちなみに本尊は秘仏で60年に一度開帳されるそうである。(つづく)
****************************************************************
ブログパーツ

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。よろしければ、この応援ボタンをクリックしていただくと、ランキングに反映されて大変励みになります。お手数をかけて申し訳ありません。
    ↓ ↓         


にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ




関連記事
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
FC2カウンター
最近の記事プルダウン
全記事表示リンク
ブログ内検索
『しばやんの日々』のブログ内の記事をキーワードで検索できます。検索された全てのブログ記事と、記事の最初の文章が表示されます。
プロフィール

しばやん

Author:しばやん
京都のお寺に生まれ育ち、大学の経済学部を卒業してからは普通の会社に入りました。
若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
従来のメインのブログでは読者の皆様から、数多くの有益なコメントを頂きましたが、コメントまでは移しきれなかったことをご容赦願います。

またBLOGariは平成29年の1月31日付けでブログサービスが終了して、今ではアクセスができなくなっています。BLOGariの記事URLにリンクを貼ってある記事がもしあれば、左サイドバーの「カテゴリ」の一番下にある「BLOGari記事のURL読み替え」で対照していだければありがたいです。

***********************
Facebook、twitterなどで記事を拡散していただいたり、リンクしていただくことは大歓迎ですが、このブログ記事のURLとブログ名は明記していただくようよろしくお願い致します。

コメント、トラックバック共に歓迎しますが、記事内容とあまり関係ない内容を論拠を示さないまま一方的に自説を唱えたり、どこかの掲示板などの文章をまるまる引用しているだけのコメントは削除させていただくことがあります。

匿名のコメントや質問にはできるかぎり対応させていただきますが、回答する場合はこのブログのコメント欄でさせていただきます。

また、お叱りや反論もお受けしますが、論拠を示さないで一方的に批難するだけのものや、汚い言葉遣いや他の人を揶揄するようなコメントなど、不適切と思われるものぱ管理人の権限で削除させて頂く場合がありますので、予めご了承ください。
***********************

リンク
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
新しいカテゴリに移すなど、カテゴリを時々見直すことがありますので、記事をリンクされる方は、個別記事のURL(末尾が"/blog-entry-***.html")をご利用ください。
年別アーカイブ一覧
RSS登録er
タグクラウド

RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
日本語→英語自動翻訳【星条旗】
このページを英訳したい人は この下のEnglishの部分をクリックすれば ある程度の英語の文章になるようです。
ブログランキング
下の応援ボタンをクリックして頂くと、ランキングに反映されて大変励みになります。お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します。
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

おきてがみ blogram
ブログランキングならblogram
文字を大きく・小さく
    月間人気記事ランキング
    個別記事への直接アクセス数の今月1日からの合計値です。毎月末にリセットされます。このブログのアクセスのうち6割以上は検索サイト経由、約2割は何らかのリンクを辿って、過去の記事のURLに直接アクセス頂いています。
    51位以降のランキングは、リンク集の「『しばやんの日々』今月の人気ページランキング (全)」をクリックしてください。
    人気ブログランキング 日本史
    「人気ブログランキング」に参加しているブログの1週間の応援ボタンのクリック件数を集計し、日本史部門でランキングを表示したもの。
    ブログ村ランキング 日本史
    にほんブログ村に参加しているブログの、1週間の応援ボタンのクリック件数を集計し、日本史部門でランキングを表示したもの。
    PINGOO! メモリーボード
    「しばやんの日々」記事を新しい順にタイル状に表示させ、目次のように一覧表示させるページです。各記事の出だしの文章・約80文字が読めます。 表示された記事をクリックすると直接対象のページにアクセスできます。
    ツイッタータイムラン
    逆アクセスランキング
    24時間の逆アクセスランキングです。表題の「アクセス解析研究所」をクリックすると、詳細な解析結果が分かります。
    ブロとも申請フォーム
    おすすめ商品
    旅館・ホテル