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二つの祇園祭の関係

前回は祇園祭の「祇園」の事を書いた。今度は「祇園祭」のことを書こう。

この祭りは大阪の天神祭、東京の神田祭とともに、日本三大祭の一つとされているのだが、八坂神社の祭礼でありながら山鉾巡行が八坂神社の前を通らないことを誰しも不思議に思う。

祇園祭山鉾巡行コース

上の図は、7月17日の山鉾巡行のコースだが、それぞれの山鉾は四条通に入って東進したのち、四条河原町で河原町通りを北上し、河原町御池で西進したのち元の場所に帰っていく。八坂神社へは四条河原町から東に歩いて10分はかかる距離である。

子供の時に、なぜ山鉾巡行が八坂神社を通らないのだろうかと思ったことがあるのだが、あまり深く追究しなかった。というより、当時は身近な大人に聞いてもわからないことは、どうしょうもなかった。

今ならネットで検索すればいろんな情報を掴むことができる。
たとえば、平安時代後期の祇園御霊会(今の祇園祭)の絵巻物が見つかった。
http://www.pauch.com/kss/g030.html#gion

年中行事絵巻祇園祭

上の絵巻物は「年中行事絵巻」(京都芸術大学蔵)の第9巻だが、ここに描かれているお祭りは今の山鉾巡行とはあまりに違いすぎる。山鉾巡行には神輿や牛車はないが、この絵巻物には描かれている。また絵巻物には山鉾巡行はないが列の先頭に鉾を担いでいる人物がいる。

「祇園祭」というとほとんど人が山鉾巡行や祇園囃子を連想してしまう。テレビでも放映されるのは山鉾巡行の映像ばかりである。重要有形・無形民俗文化財に指定されているのも山鉾と山鉾巡行などの行事である。

祇園祭神幸祭

しかしながら、祇園祭には山鉾巡行のほかに、その日に「神幸祭」の神輿渡御というのがある。先程の平安時代の絵巻物に描かれているのは、山鉾巡行と同じ日に行われる「神幸祭」とかなり似ていると思われる。私は「神幸祭」はじっくりと見たことがないので今年はぜひ見に行きたい。

この神幸祭では神輿が八坂神社から出発する。八坂神社のお祭りだから当然と言えば当然だが、この巡行ルートが面白い。

祇園祭神幸祭ルート

先程の山鉾巡行の図と見較べて頂くとよくわかるのだが、神輿が山鉾を設置している鉾町を通らないのである。

山鉾巡行も神幸祭もどちらも八坂神社のお祭りなのに、まるで別のお祭りがおこなわれているようでもある。なぜ、山鉾は八坂神社を通らず、神輿は鉾町を通らないのか。

まず今のような山鉾巡行が行われるようになったのはいつなのか。

都名所図会祇園会

もう少し調べると、江戸時代の「都名所図会」に祇園祭の絵が描かれている。二つの絵があっていずれも山鉾巡行の絵で、神輿のことは本文にルートのことが書かれているだけだ。

ルートは微妙に違うが、山鉾が八坂神社を通らず、神輿が鉾町を通らないのは同じである。

いろいろネットで調べると、山鉾を作って巡行させるようになったのは室町時代かららしい。その後応仁の乱があって中断したが、室町時代には祇園祭のクライマックスは山鉾巡行になっていたようだ。

では、なぜ山鉾巡行は八坂神社を通らず、神輿が鉾町を通らないのか。

この疑問を解くカギが、四条寺町にある八坂神社の御旅所である。四条寺町というのは、全ての山鉾の設置場所よりも東(すなわち八坂神社寄り)に位置している。

八坂神社御旅所

山鉾巡行は八坂神社の三基の神輿が7月17日に御旅所に渡御される前の露払いの役割ということのようだ。八坂神社に近い場所は神域なので露払いの必要がないということらしい。

そして、この御旅所に置かれた三基の神輿は一週間後の7月24日に八坂神社に戻る。これを「還幸祭」という。

祇園祭は、昔は「祇園御霊会」と言われていたが、「還幸祭」は御旅所を出た神輿が氏子の間を全部めぐって、ありとあらゆる災いの神を全部神輿に積んで持ち去ってくれるというお祭りであるから、本来の祇園祭のメインイベントは「還幸祭」ということになるのだろう。

山鉾巡行は室町時代に時の権力者が鉾を動かしてはいけないというお達しが出た時に「神事これなきとも、山鉾を渡したし」と町衆が抵抗して山鉾を動かした記録があるようである。それ以来町衆中心の山鉾巡行と、八坂神社の氏子中心のお祭りと二つに分かれたと理解すれば良いのだろうか。

いよいよ明日は、祇園祭の山鉾巡行だ。今回は「神幸祭」の神輿渡御を見逃さないようにしたい。
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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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