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高知市五台山の名所から、いの町の文化と自然を楽しむドライブ~~高知方面旅行2

ホテルをチェックアウトして、高知市の東にある五台山公園に向かう。
標高146メートルと決して高くない山なのだが、頂上に上ると素晴らしい景色を楽しむことができた。

五台山公園からの眺望

狭い高知港に向かって鏡川、久万川、国分川、下田川など多くの川が流れ込んでいる。山あり川あり都会ありの素晴らしい眺めである。

公園のすぐ近くに四国霊場第三十一番札所の竹林寺がある。
竹林寺は神亀元年(724) 聖武天皇の勅願により創建されたとあり土佐屈指の古刹で、その後、大同年間(806-810)に弘法大師がこの地に滞在し、堂塔を修復したと伝えられている。
江戸時代には土佐藩主の帰依を受け、藩主祈願寺として隆盛したのだが、この寺も明治初期の廃仏毀釈でかなり衰退したという。その後復興されて往古の姿を取り戻したのだそうだ。

竹林寺庭園

客殿に入って、夢窓国師の作と伝えられる庭園を鑑賞した。この庭園は昭和9年に国名勝の指定を受けており、土佐の3名園の一つとされている。

宝物館には藤原時代から鎌倉時代にかけての仏像17体があり、いずれも国の重要文化財に指定されているのだが、後背のない仏像もあり、廃仏毀釈により傷められたものもいくつかあるのではないかと思ったが、どういう経緯でこれらの仏像が廃仏毀釈の波を乗り越えてきたか、詳しいことは良くわからなかった。この狭い宝物館の空間に高知県下の国重要文化財指定の仏像の約3分の1が集まっているというのだが、裏を返すと、それほど明治初期における高知県の廃仏毀釈が激しかったということでもある。

竹林寺五重塔

以前は三重塔があったらしいが、明治32年に台風で倒壊したため、昭和55年に現在の五重塔に再建されたそうだ。新しいとはいえ高さは31.2mもあり、総ヒノキ造りの大変立派なものである。設計施工は香川県詫間町の富士建設株式会社が請負い、施工にあたったのは京都宇治の工匠・岩上政雄氏なのだそうだが、宮大工を延べ5400人も使う大工事であったらしい。

この竹林寺のすぐ近くに妙高寺というお寺が昔はあったというのだが、明治初年の廃仏毀釈によって廃寺になってしまった。その跡地が、「高知県立牧野植物園」となっている。

土佐の代表的な民謡である「よさこい節」の一番は「土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし買うを見た  よさこい よさこい」だが、昔は「おかしことやな はりまや橋で 坊さんかんざし 買いよった」だったのだそうだ。

この一節は安政2年(1855)5月に、竹林寺の脇坊・妙高寺住職の純信が鋳掛屋の娘お馬と相思相愛の仲になり、純信がお馬のためにかんざしを買って贈ったことが噂となって広まり、それを苦にして二人が駆け落ちしたという事件があったことを唄っているのだが、その後2人は讃岐金毘羅参道の旅籠屋にいるところを土佐藩吏に捕えられ、破戒と番所破りの罪で城下の三カ所でさらし者にされたのち、純信は国外追放、お馬も安芸川以東に追放されたという。

そして、この「よさこい節」が幕末から勤王の志士たちによって歌われ、明治初年に流行したのだそうだが、昔の歌詞を読むと江戸末期の土佐藩の仏教の堕落を揶揄しているようでもあり、高知県で廃仏毀釈が激しかったこととどこか繋がっているような気がしたりもする。

牧野富太郎植物園

「高知県立牧野植物園」の敷地は17.8ヘクタールとかなり広く、景色も素晴らしいし、展示物もなかなか見ごたえがあった。

植物の知識の乏しい私には、植物そのものより牧野富太郎の人生や、彼の直筆の植物図の方に興味を覚えた。
牧野富太郎は文久2年(1862)に現在の高知県高岡郡佐川町に生まれ、3歳で父を、5歳で母を亡くし、祖母の手で育てられ、幼い頃は病気ばかりの虚弱児だったそうだ。
小学校を中退し、独力で植物学を学び、22歳の時に東京帝大理学部植物学教室に出入りするようになり、多くの業績が認められてその後東京帝大の講師となるのだが、金銭感覚に欠如しており、家賃が払えず追い出され結婚以来18回も引越しを繰り返したのだそうだ。

牧野富太郎書斎

その様な貧乏生活の中で借金を重ねながら貴重な本を買い集め、牧野植物園の牧野文庫には4万5千冊の蔵書が保管されているという。館内には牧野博士の借用証までが展示されてあったが、博士の借金は今のお金で億単位であったらしい。それだけの借金をしながら天衣無縫の人生を生き、95歳の天寿を全うした。
彼のスケールの大きい生き様は、ドラマ化すれば結構面白そうだ。

牧野富太郎の生涯は、次のURLがわかりやすく写真も多いのでお勧めだ。
http://www.nc-21.co.jp/dokodemo/whatnew1/satomi/satomi1.html
http://www.nc-21.co.jp/dokodemo/whatnew1/satomi/satomi2.html

展示館には彼の手書きのスケッチが多数展示されていたが、細い筆で葉の細かい毛や、葉脈や根の一本一本まで精密に描かれた植物図を見て驚いてしまった。

fig46821_10.png

『青空文庫』に彼の『植物知識』という著作の全文テキストが紹介されているが、文章も素晴らしければ絵も素晴らしい。最初の文章を読むだけで、私のような植物の知識のない者でも、植物についての興味が沸々と湧いてくる。この『植物知識』のはじめの文章は次のようなものである。

「花は、率直にいえば生殖器である。有名な蘭学者の宇田川榕庵(うだがわようあん)先生は、彼の著『植学啓源』に、『花は動物の陰処の如し、生産蕃息(せいさんはんそく)の資(とり)て始まる所なり』と書いておられる。すなわち花は誠に美麗で、且つ趣味に富んだ生殖器であって、動物の醜い生殖器とは雲泥の差があり、とても比べものにはならない。そして見たところなんの醜悪なところは一点もこれなく、まったく美点に充ち満ちている。まず花弁の色がわが眼を惹きつける、花香がわが鼻を撲(う)つ。なお子細に注意すると、花の形でも萼(がく)でも、注意に値せぬものはほとんどない。
この花は、種子を生ずるために存在している器官である。もし種子を生ずる必要がなかったならば、花はまったく無用の長物で、植物の上には現れなかったであろう。そしてその花形、花色、雌雄蕊(しゆうずい)の機能は種子を作る花の構えであり、花の天から受け得た役目である。ゆえに植物には花のないものはなく、もしも花がなければ、花に代わるべき器官があって生殖を司っている。(ただし最も下等なバクテリアのようなものは、体が分裂して繁殖する。)」
http://www.aozora.gr.jp/cards/001266/files/46821_29301.html

学生時代に生物学を学んだ時に「面白い」と思ったことはほとんどなかったのだが、この頃に牧野富太郎のこういう文章に触れていれば、植物学に興味を覚えたかもれない。

いのまち紙の博物館

牧野植物園から、「いの町紙の博物館」に向かう。
紙が発明されたのは1900年くらい前の中国だが、西暦610年ごろに曇徴(どんちょう)という高麗(いまの朝鮮)の僧侶によってわが国に紙が伝えられ、それが各地に拡がり工夫を重ねて日本独特の手漉き和紙を作り上げたのだそうだ。
土佐和紙には古い歴史があり、平安時代の延長5年(927)に延喜式献上品として奉書紙・杉原紙を献納したという記録や、「土佐日記」で知られる紀貫之が土佐の国司として製紙業を奨励したという記録があるのだそうだ。
いの町は清流仁淀川に沿った町で、古くから「紙の町」として発展したところであるが、いまでは町内に14戸の工場が残されているだけだという。

いのまち紙漉き

「いの町紙の博物館」では、土佐和紙の歴史と、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった紙の原料から手漉きの手法により土佐和紙になるまでの工程を見ることができるし、土佐和紙の手漉き体験もできるようだ。

紙の原料となる楮や三椏を見たのは初めてだが、この木の枝を蒸して皮をはいで乾かして紙を作ることを考えた昔の人はつくづくすごいと思う。木材パルプを用いる西洋紙とは違い毎年収穫できるので、環境を破壊することもない。
楮も三椏も雨が多く暖かい土地でよく育ち、高知県の山々は特に栽培に適した環境で、全国の和紙の原料の半分以上は高知県で生産されているのだそうだ。

この博物館から20分ほど仁淀川沿いを走ると、「水辺の駅あいの里仁淀川食堂」というところがある。ここで予定通り昼食をとる。

アユの塩焼き定食

昼食のメニューは、鮎の塩焼き定食と初めから決めていた。清流仁淀川を眺めながら食べる鮎はとても旨かった。

次に向かったのは、ネットで写真を見てどうしても行きたいと思っていた「にこ淵」。
この「にこ淵」は太陽の光が差し込む時間帯である昼の1時前後が最も神秘的で美しいと書かれていたので、この場所にこの時間帯に着くためにこの日の旅程を考えていたし、狭い山道を歩けるよう、滑りにくい靴まで履いて用意万端だ。この日は朝から快晴で、最高のコンディションだ。

「にこ淵」への行き方は、いろんな人が書いているが、私は次のURLを参考にした。
http://www.geocities.jp/kurumilk_web/hyogo/taki0901/nikobuti.htm
http://blog.livedoor.jp/hami_orz/archives/51846464.html

私のカーナビではこの「にこ淵」を認識しないので、「グリーンパークほどの」を目的地に登録して、走行距離を確認しながら目的地にたどり着いた。R194から「グリーンパークほどの」の案内板を目印に右折し、そこから1.7kmほど進むと、道路左下に「にこ淵」と書いた看板がある。車は少し先に数台停めるスペースがある。

「にこ淵」の入り口から狭い急坂を降りていくが、地面は滑りやすく、何箇所かは木の枝を掴んだりロープを伝って進んだり、梯子を下りたりするところなので、手荷物は絶対に持たないほうが良い。
何度かスリルを味わいながら、4分もすれば素晴らしい「にこ淵」の全貌が見えてくる。

にこ淵

これが「にこ淵」だが、こんなに美しい滝はこれまで見たことがない。落差は7mぐらいあるだろうか。この滝と大きな淵の神秘的なエメラルドグリーンの色がとても絵になる景色なのだ。
瀑音を聞きながら、晴天の日の昼頃しか見られないこの美しい空間にしばらくいるだけで、心も体も洗われてとても清新な気分になれた。

   <つづく>
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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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