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震度3で2万人以上の犠牲者が出た明治三陸大津波

明治29年(1896)6月15日の三陸地方の夜は、日清戦争に従軍して凱旋した兵士たちを迎えて多くの村々で祝賀式典が開かれ、兵士を迎えた家では宴もたけなわであった。またこの日は旧暦の5月5日でもあり端午の節句を親戚家族で祝う家が多かったという。
その日の夜7時32分頃に三陸沖200kmの日本海溝付近で起きた地震は、宮古測候所の発表によれば震度2~3程度のもので、この地震に気がつかなかった人が多かったそうだ。しかし揺れは5分近く続いたという。

地震としての被害は全くなかったそうなのだが、地震後30分を過ぎた午後8時頃に、北海道から宮城県に至る太平洋岸一帯に突如として大津波が襲う。

明治三陸大地震

この津波が北陸地方を中心に大被害をもたらし、この時の死者は岩手県で18,158人、宮城県で3,452人、青森県で343人、北海道で6人と合わせて22,000人近い数字にも及んだ。

津波の高さは、岩手県の三陸海岸では下閉伊郡田老村(現・宮古市)で14.6m、同郡船越村(現・山田町)で10.5m、同郡重茂村(現・宮古市)で18.9m、上閉伊郡釜石町(現・釜石市)で8.2m、気仙郡吉浜村(現・大船渡市)で22.4m、同郡綾里村(同)で21.9mと軒並み10mを超える到達高度を記録したという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E4%B8%89%E9%99%B8%E5%9C%B0%E9%9C%87

津波の高さ

岩手県綾里村の津浪は、38.2mという想像を絶する高さであったそうだ。
ネットで探した綾里地区の「明治三陸大津波伝承碑」の碑文には驚くべき内容が記されている。
〈綾里村の惨状〉
「綾里村の如きは、死者は頭脳を砕き、或いは手を抜き足を折り実に名状すべからず。村役場は村長一名を残すのみ。尋常小学校、駐在所みな流失して片影を止めず」(岩手県知事より内務大臣への報告)

「その屍たるや道路に満ち沙湾に横たわり酸鼻言うべからず。晩暮帰潮に随って湾上に揚るもの数十日、親の屍にすがりて悲しむものあり子の骸を抱き慟哭するものあり、多くは死体変化し父子だも尚その容貌を弁ずる能はざるに至る。頭足、所を異にするに至りては惨の最も惨たるものなり。」

明治三陸大津波伝承碑

改めて書くが、これだけの大津波の被害が出ておりながら震度は2~3だったと言うのだ。 大きな揺れではなかったから、人々は津波を警戒しなかったところにとんでもない津波が来たために大きな被害が出たのだ。

山下文男氏の「津波てんでんこ」という本を読むと、津波の後、岩手県の釜石町長が郡役所に提出した報告書には「起災前、一、二回の震動アリタリト云フガ、甚ダ微弱ニシテ、知覚セザルモノ多キニ居レリ」と書かれているそうだ。(p.33)
また当時の文書や記念碑の記述を見ると、事前の地震について記述しているものは大変少なく、いきなり津波の記述になっているものが大半だそうだ。このことは、地震の揺れそのものは大したことはなかったことを意味している。

こんな小さな地震でも大きな津波が来ることがあることを今回調べて初めて知ったが、明治の三陸大津波の時の地震の震度がこんなにレベルであったことをどれだけの人が知っているのだろうか。

このように、地震の規模に比して不相応に大きな津波を発生させる自信を「津波地震」と呼ぶそうだが、どうしてそのような事象が起こるのだろうか。

Wikipediaによると、こう説明がなされている。
「海底において地震が発生し、海底面に地震断層による地殻変動が現れると、それは海水の上下動を呼び起こし、津波を発生させる。通常は、津波を発生させる地震は大規模な地震であり、体感もしくは強震動地震計などにより、津波を引き起こした地震による揺れ(地震動)を感知することができる。一般的に断層運動の大きさ(モーメントマグニチュード)が大きいほど、地震動も津波の規模も大きくなる。
しかしながら、断層運動によって、地震動(揺れ)と津波(海底面の地殻変動に よる海水の上下動)がそれぞれ生じるのであって、地震動が津波を引き起こすわけではなく、地震動と津波は原因は同じだが別の現象であるともいえる。よって 地震動と津波の大きさがリンクしない場合もあり、極端なケースになると、体感もしくは地震計によって観測した地震動は比較的小規模であるにも関わらず、大きな津波が発生する場合もある。このタイプの地震を津波地震と呼称する。」

「大きな地殻変動が通常の地震よりも長い時間をかけて発生することで、有感となるような短周期の地震動をあまり生じさせることなく大きな津波を発生させるこ とで、津波地震となる。一般に地震断層の破壊伝播速度は、通常の地震ではおおむね秒速2.5~3km程度であるとされる。しかし津波地震では秒速1km程度の場合が多い。このような地震では強震動をあまり生じさせないが、津波の波源域は津波が拡散するよりも早く数分以内の短い時間で広がるため、津波が大きくなる。破壊伝播速度がこれよりさらに十分遅い場合は、津波の波源域が広がる前に津波が拡散してしまい、大きな津波も発生しなくなる。」

私は長い間「震度」と「マグニチュード」とは良く似たものだと解釈していたが、調べると「震度」とは「ある地点の地震の揺れの程度」を意味し、「マグニチュード」は「震源から放出される地震波のエネルギーの大きさを間接的に表現したもの」で尺度は何種類かあるようだが、日本では気象庁が定めた尺度を用いているそうである。
ということは、同じマグニチュードの地震であっても、震度の測定地点が震源からその地点までの距離が近いか遠いか、震源が深いか浅いか、伝播経路やその地点周辺の地盤条件等によって、地点の震度は変わると言うことである。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/sindo.htm

もし震源地の地盤が軟らかければ、大きなマグニチュードの地震であっても震度が低くなることがあるということは重要なことだと思うのだが、あまりこういう事実は伝えられていないような気がする。
冒頭に書いた明治三陸大津波をもたらした地震の震度はわずか2~3程度であったのだが、マグニチュードは8.6程度と推定されているそうだ。「津波地震」の怖さは、もっと良く知られる必要があると思う。

「津波地震」の事例としては、この明治三陸地震津波のほかに、慶長10年(1605)駿河湾から徳島沖まで伸びる南海トラフを震源とする慶長大地震もそうらしいのだが、この地震の記録は残念ながらほとんど残されていない。

はじめに「津波てんでんこ」という本を紹介したが、この「てんでんこ」という言葉は、「てんでばらばらに」という意味だそうだ。では「津波てんでんこ」というのは、津波が来た時は、家族や友人のことは一切構わずに、一刻も早く逃げなさいという教えなのだそうだ。 多くの災害では親は子を助けたり子が親を助けたりするのだが、津波の時はそのような行動をとると共倒れになるケースが多い。地域単位で犠牲を最小限にするためには、一人ひとりが「てんでんこ」になって少しでも高い所に逃げることによって、共倒れの悲劇を防ぐことがベストの選択になると言う昔からの言い伝えなのだ。

YOMIURI ONLINEではこの「てんでんこ」の考え方で釜石市の小学生が高台に登って助かったとの3/28付けの記事が掲載されている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110328-OYT1T00603.htm?from=y10

今回の東日本大震災で多くの犠牲者が出たが、もしマグニチュードが同程度でありながら震度が3程度の「津波地震」であったとしたら、どれだけの人々が高台に逃げようとするだろうかと考えるとぞっとする。

津波画像

津波の画像を何度かテレビで見たが、津波のスピードはかなり早く、津波に気付いてから高台に登るのでは間に合いそうにない。

地震予知が正確にできる時代が来れば話は簡単だが、当面そのような時代が来そうにない。ならばせめて、海面や海中や海底のどこが適切かよくわからないが、海にいくつかのセンサーを設置して、津波の発生をとそのエネルギーや津波速度等を測定して、どの程度の津波がいつ頃どこに到達するかを正確に予想することが出来ないものだろうか。それが出来れば、多くの人の命を救うことが出来るのではないか。

次のURLを読むと、青森県から宮城県に至る三陸海岸各地に「大津浪記念碑」が建てられているそうだ。

写真の記念碑にはこう書かれている。

「高き住居(すまい)は児孫(こまご)に和楽(わらく)、想へ(おもえ)惨禍(さんか)の大津浪(おおつなみ)、此処(ここ)より下に 家を建てるな。
 明治二十九年にも、昭和八年にも津波は此処まで来て部落は全滅し、生存者、僅かに 前に二人後ろに四人のみ 幾歳(いくとせ) 経る(へる)とも要心あれ。」
http://freeride7.blog82.fc2.com/blog-entry-1606.html

明治29年、昭和8年の大津波の生存者が後世のためにこのような石碑を建てたにもかかわらず、津波を知らない世代がこの場所より下に家を建てていく。そして今回もまた大災害が繰り返されてしまったのだ。

これからは被災地の復興がわが国の課題となるが、今度こそはこの石碑を建てた先人の警鐘を受け止めて住民が安心して暮らせるよう、高台に学校や役場や住宅を建てて海の近くに低地は公園のほか農業用地、太陽光発電プラント、漁業関係者がいざという時に避難可能な高層の津波シェルターなどを配置するなどの再興プランをしっかりと立てて、今後もし津波が来ても、それが津波地震による津波であったとしても、後の世代がこのような悲惨な結果にならないように智恵を絞ることが、この怖ろしい津波を体験した世代の責務だと思う。
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平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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