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国宝の明通寺本堂・三重塔から紅葉名所・萬徳寺などの古刹を訪ねて~~若狭カニ旅行2

前回は「お水送り」の神事を行う若狭神宮寺のことを中心に書いたが、今回はほかのお寺のことを書くことにする。小浜には歴史のある素晴らしいお寺がいくつもあり、とても一日では巡りきれないくらいだ。

福井県の建築物で国宝あるいは重要文化財に指定されているものは26棟あるのだが、このうち小浜市に7棟が存在する。うち2棟は国宝で、福井県の国宝はこの2棟しかない。また彫刻では46躯のうち24躯が小浜市に存在しその大半が仏像だ。
http://info.pref.fukui.jp/bunka/bunkazai/sitei/itiran.html

みほとけの里若狭おばま

旅行から帰ってから見つけたのだが、若狭おばま観光案内所作成のデジタルパンフレットは、非常によくできている。小浜の古刹の素晴らしい仏像の画像とマップとを古刹の由来と住所・電話番号が記載されており、小浜の古刹巡りは、このファイルを印刷しておけば、自転車で巡るにせよ、カーナビを使って車で巡るにせよ重宝すると思う。
http://www.pamph-navi.jp/art/view_dynamic/pdfView.php?src=pam10008055

このデジタルパンフレットを見ればわかるように、文化財のある古刹のほとんどが小浜市の東南部に点在しており、この地域は人口も観光客も多くないためか、事前にネットで調べても昼食をとる適当な場所があまり見つからなかった。(上記のデジタルパンフレットにも「飲食店はありません。御注意ください。」と書いてある。)
せっかく小浜に来て、どこにでもあるような国道沿いのチェーン店で昼食をとるのでは面白くないので、小浜ICに到着してすぐに小浜港に近い「小浜お魚センター」にある「五右衛門」というお店で午前10時半頃に昼食をとる旅程を組んだ。
ここなら新鮮な魚が割安な価格で食べることができるし、朝早くから営業しているので、早めのランチでも使えるのがいい。

五右衛門昼食

ここで刺身定食を注文したが、この分量で1200円。魚はもちろん仕入れたばかりの魚で新鮮そのものだ。

食事を終えて最初に向かったのは、本堂と三重塔が国宝に指定されている明通寺(みょうつうじ)。真言宗御室派の寺院である。

明通寺山門

山門は江戸時代の明和9年(1772)に再建されたものだが、左右の金剛力士像は鎌倉時代の造立で、小浜市の指定文化財だ。

明通寺本堂

国宝の本堂と三重塔はいずれも鎌倉時代に建てられたもので、福井県の国宝がこの寺にしか存在しない。このお寺の2つの国宝と秋の風情をカメラに収めたかったのだが、残念ながら本堂は30年に一度の屋根の吹き替え工事で、足場が組まれていたために、良い写真が撮れなかった。工事が完了するのは来年の春なのだそうだ。

もちろん内部には入ることができて、仏像の説明を受けることができた。
本尊の薬師如来坐像をはじめ、降三世明王立像、深沙大将立像、不動明王立像はいずれも藤原時代のもので、すべてが国の重要文化財に指定されている。小浜の古刹はどこでもそうなのだが、参拝者とこれらの仏像を遮るものは何もなく、昔の人々と同様の祈りの空間を味わうことができるのは嬉しい。

明通寺三重塔

本堂を出て三重塔に向かう。
三重塔は昨年に屋根の吹き替え工事は終了したばかりで、外観を見ることが可能だが、内陣の絵の修復作業を行っておられるために、ビニールシートやコーンなどが一部置かれていて、近づきすぎるとそれが写ってしまう。目立たない程度にしようとするとカメラのアングルがかなり限定されてしまう。
本堂も三重塔も工事が終了するまで、しばらくかかりそうだ。来年の春には本来の姿をみせてくれるのではないか。

明通寺は大同元年(806)に北陸地方を巡行中の坂上田村麻呂が創建したと伝えられているが、坂上田村麻呂は征夷大将軍に任じられて蝦夷を征伐した平安時代の武人である。
2度にわたる征討で北上川中流域までを平定し延暦21年(802)に胆沢城、延暦22年(803)に志波城を造ったが、三度目の遠征は財政上の理由で中止となり、それ以降は多くの神社・仏閣の創建に関わったという伝承がのこっている。
Wikipediaには大同元年(806)に平城天皇の命により富士山本宮浅間大社を創建し、翌大同2年(807)には京都の清水寺を創建したと記載されているが、この時期に坂上田村麻呂が創建した寺社は東北中心にやたらあるのだ。
たとえば新潟県十日町市の公式HPには、坂上田村麻呂が大同2年(807)に創建した神社ばかりが掲載されているページがある。
http://www4.city.tokamachi.niigata.jp/kanko/sample-list.html
坂上田村麻呂が明通寺を創建したのはその1年前の大同元年(806)と言うのだが、これだけ全国各地の多くの寺社の創建に実際に関与できるとは思えない。
この時期に創建された寺院は坂上田村麻呂だけではなく空海もよく各地の寺院で名前が出てくるのだが、古代の英雄の名前を借りて創建者とすることで、寺社の価値を高めようとしたのではないかと考えるべきだと思う。

明通寺かやの大木

拝観を終えて勝手口から境内を出るところに、天然記念物に指定されている樹齢500年のかやの木がある。これも存在感のある木なので写真を撮っておいた。

明通寺から前回の記事に書いた鵜の瀬、神宮寺と巡ってから妙楽寺に行く。
この寺は真言宗高野山派の寺院で、養老3年(719)に行基が本尊を彫り、延暦16年(797)に空海が再興したと伝えられているが、記録がないので建立の起源は定かではないそうだ。

妙楽寺山門

ここが妙楽寺の山門だが、残念ながら紅葉のピークには少し早かったようだ。

妙楽寺本堂

本堂は鎌倉時代初期に建造され、若狭における最古の建物で国の重要文化財に指定されている。
御本尊の千手観音菩薩立像は平安時代中期のものでこれも国の重要文化財に指定されている。長い間秘仏にされていたためか、施された金箔は今も鮮やかである。檜の一木彫ということなのだが、よくこんな複雑な仏像を一本の木で彫りあげたものだと感心した。

次に、紅葉の名所として知られる萬徳寺に進む。この寺も真言宗高野山派だ。

萬徳寺本堂

この寺の前身は極楽寺といい文永2年の(1265)の若狭惣田数帳に存在が記されているそうだが、応安年間(1370頃)に安芸国円明寺の僧覚応が極楽寺を天台宗から真言宗に改宗し、寺号も正照院と改め、以後武田氏の庇護により隆盛したが、元亀年間に兵火により焼失し、慶長7年に城主京極高次の寄進を受け、寺号を萬徳寺と改めたという。

萬徳寺庭園

ここの庭園は国指定名勝で、春はツツジ、初夏は新緑、秋は紅葉が美しいことで有名なのだが、残念ながら訪れた日は、紅葉のピークには少し早かったようだ。
本堂にある本尊の阿弥陀如来坐像は、平安時代後期の彫刻で檜の一木造りで国の重要文化財に指定されている。当山の前身である極楽寺の本尊でもあったそうで1000年以上前の仏像なのだが、近くで見てもとてもそんなに古いものには見えない。仏像のおだやかな表情も素晴らしいが、台座は衣の垂れた部分で覆われて、そのひだの曲線が見事に彫られているのが印象に残った。

最後に羽賀寺に行く。この寺の宗派も真言宗高野山派だ。拝観は4時までだがぎりぎり間に合った。

羽賀寺本堂

霊亀2年(716)に鳳凰が舞い降りた吉祥を慶び、元正天皇の命により行基が開山したと伝えられる寺だが、洪水や火災などで建て替えられ、今の本堂は文安4年(1447)の建立で国の重要文化財に指定されている。
本尊の木造十一面観音菩薩立像も国の重要文化財で、制作されたのは10世紀初期と言われているが、千年以上経った無仏像とは思えないほど極彩色がよく残されている。
他に千手観音菩薩立像、毘沙門天立像も国の重要文化財だ。

他に多田寺、圓照寺、加茂神社など古い古刹がいくつもあるのだが、紅葉名所の萬徳寺を除いては、週末ながら観光客はまばらであった。

明通寺の受付の方と話したが、国宝といっても修復工事に必要な資金は国や県からの補助金だけでは足りず、地域によって異なるがどこの社寺でも工事費の相当部分を自前で調達するしかないのだそうだ。
特に檀家が減り観光収入が期待できない寺院では、それが大変な負担になる。明通寺の年間の参拝者は5万人程度で、京都清水寺の参拝者の観光シーズンの1日分程度だということだが、これでは改修のための資金づくりは大変だったと思われる。
次のURLによると、明通寺の今回の修復工事に必要な資金は2億5千万円で、国の補助は75%。残りの部分を福井県と、小浜市と明通寺が負担するのだそうだ。
http://www.buddhachannel.tv/portail/spip.php?article13229
国の補助はお寺の財政状況や収入によってかなり異なるそうだし、県や市の支援も地域によっては少ないところも多いと聞く。2割前後の自己調達はどの社寺も必要なのだろう。

明通寺の本堂・三重塔に限らず国宝や重要文化財に指定された建築物は、その価値を減じないために、安普請の工事は許されず古来の工法での修復工事が不可欠となる。檜皮葺の修復は檜の皮を大量に使うのだが、宮大工を呼んでの工事費用は当然高くつく。明通寺は境内に多くの檜の木があるので、まだ檜皮の調達は割安にできたと推測するが、もし檜皮まで調達するとしたらもっとお金が必要だったろう。

地域の文化を支えてきた地域経済循環の仕組みが崩れて、働き手となる若い世代は都会に出たまま帰ってこない。地方に限らず、京都や奈良でも、観光客の少ない寺社のかなりの部分が、年金生活者の多い檀家や氏子から寄付を募って建物を維持しなければならないという状態になっている。
日本人が千年以上も護り続けてきた文化財を後世に残すためには、地元に多くの若い世代が残り、一人でも多くの観光客がこういうお寺や神社を訪れて、いくらかでもお金を落とすことが必要なのだ。

古刹巡りを終えて、常神半島にある民宿に向かう。今年は『まるしもや波華楼』というところで宿泊した。宿の外はすぐ海浜で眺めも良く、夏の海水浴シーズンにはほとんど宿泊客で砂浜が独占できるような場所だ。

越前かに

目当てはもちろんカニ料理。焼蟹、蟹刺、茹蟹、蟹鍋、蟹天婦羅、蟹雑炊と、カニのフルコースでお腹がいっぱいになり、大満足の一日だった。
<つづく>
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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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