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日本軍が真珠湾に向かっていることを知りながら手を出させなかったアメリカ側の事情

このブログで日中戦争からハル・ノートまでの流れをいろいろ書いてきたが、アメリカが絡む問題で、一つ書いておきたいことがある。

アメリカで1935年に成立した「中立法」という法律があるのだが、この時代を読み解くにあたっては、この法律を理解しておくべきであることを最近になってようやく分かってきた。
この法律を調べると、米大統領が、戦争状態にある国が存在していることまたは内乱状態にある国が存在していることを宣言した場合には、交戦国または内乱国に対して武器や軍需物質の輸出を禁止する法律であると説明されている。

例えば、盧溝橋事件を契機にわが国と中国とがお互いに宣戦布告をせずにずるずると軍事衝突の継続状態に入ったのだが、もしいずれかが宣戦布告をしていたとすれば米大統領により「戦争」状態と宣言されてアメリカの「中立法」の適用対象となってしまう。
中国はアメリカから武器や軍需物資の支援を受けられなくなって戦うことが困難となり、わが国はアメリカから石油や資源が輸入できなくなってしまって自国の経済が成り立たなくなってしまう。
だから日中は宣戦布告をしないまま戦い続けながら、この争いを「戦争」と呼ばずに「支那事変」などと呼び、日中両国がお互いにアメリカとの貿易がストップすることを避けようとしたということなのだ。
http://www.geocities.jp/nankin1937jp/page061.html

ホワイトハウス

しかしながら、そもそも「中立法」は、アメリカが二国間の紛争などに巻き込まれることがないようにするための法律である。アメリカの議会では、日中間における「事変」については実質的には「戦争」であるから「中立法」を適用し、日本に戦争資材供給を禁止せよとの議論がかなりあったようだ。

ところが、「中立法」が発動されると、アメリカはわが国の交戦国である中国に対し武器の輸出が出来なくなってしまうことに、強く反対する国内勢力が存在した。
アメリカ政府は「相互に宣戦布告を行っていない両国間の関係で、アメリカが戦争の存在を確認するのは好ましくない」という理由で、日中の軍事衝突に関して「中立法」の発動を避けたという経緯があったようなのだ。

チャーチル

この「中立法」にからんで、もう一つの問題があった。同盟国からの参戦要請があっても簡単には応じられない点である。現にアメリカはイギリスのチャーチル首相から参戦の要請を受けていた。アメリカがすぐに参戦できなかったのは、参戦に反対する当時の世論もあったのだが、参戦すること自体が「中立法」に抵触することが問題であったようだ。

何度かこのブログで紹介している倉前盛通氏の『悪の論理』に、こう書かれている。

「昭和16年6月、ドイツがソ連と戦端を開いたとき、米国のルーズベルト大統領は、いよいよ、欧州の大戦に介入すべき時が来たと判断した。…
当時、米国には中立法という法律があり、海外の戦争に介入することを禁止していた。欧州でナチス・ドイツと英仏の間戦争がはじまり、フランスが降伏し、英国もドイツの猛烈な空襲と、ドイツ潜水艦による通商破壊戦のため、絶体絶命の危地に陥ってしまった。ルーズベルト大統領としては、この英国の危機を救うために、何とかして、欧州の戦争に介入してドイツと戦いたいと焦慮したが、中立法があるために意にまかせなかった。
しかし、米国は昭和15年、50隻の駆逐艦を英国に売り、その代償としてバミューダ島の永久租借権を得た。これは明らかに中立国としての国際法違反である。その上、米国駆逐艦によって、英国商船隊の船団防衛をおこなった。これは、もはや米国海軍の直接的な公然たる戦争介入であった。ヒトラーは米国の挑発に乗らぬようドイツ潜水艦に厳命を下していたが、米国駆逐艦による不法な爆雷攻撃が、あまりに執拗に続けられたので、たまりかねて、正当防衛のため、ドイツ潜水艦が米駆逐艦を撃沈してしまうという事件が発生した。 ルーズベルトは、こおどりして喜び、早速、議会に対し、「ドイツ潜水艦の不法攻撃のため、米駆逐艦が撃沈された。ただちにドイツに宣戦しよう」と提案したが、米議会がよく調べたところ、中立法を破って英国船団を護衛していたのは、米国の軍艦であったことが判明し、かえって、議会から「悪いのは米国海軍の方ではないか」とやっつけられ、ルーズベルトの目算は外れてしまった。
そこで、次に目をつけられたのが日本であった。」(倉前盛通『悪の論理』p.71-72)

アメリカがドイツと戦いたくてもできなかったのは「中立法」のためであった。では、どうすればアメリカがドイツと戦うことが可能となるのかというと、アメリカがドイツから攻撃される状態になるということ、すなわちアメリカが自衛のために戦わざるを得ない状態に持ち込むことが必要であったという事である。しかし、アメリカはその演出に失敗してしまった。
そこで、資源を持たない日本を経済制裁して資源が手に入らないようにした上で、挑発して戦争におびきよせて、うまく日本に先制攻撃をさせれば、日本の同盟国であるドイツに対してもアメリカが参戦できる正当な理由になる、とルーズベルトは考えたのではないのか。

この、アメリカ側の事情を理解すると、何故アメリカが我が国を異常に挑発したのかが見えてくる。アメリカは、どこかの国に攻撃されなければ第二次世界大戦に参戦したくともできなかったのだ。だからこそ、日本が応諾するはずのない「ハル・ノート」を突き付けたということではないのか。

ルーズベルト

1941年11月25日の戦争閣僚会議でルーズベルト大統領が議題としたのは和平の見通しではなく、戦争はいかにして開始されるかという事だったという。この会議に出席したスチムソン陸軍長官のこの日の日記にはこう書かれているそうだ。
「…大統領は対独戦略ではなく、専ら対日関係を持ち出した。彼は多分次の日曜日(12月1日)には攻撃される可能性があると述べた。…問題は我々自身に過大な危険をもたらすことなく、いかに日本を操って最初の発砲をなさしめるかと云ふことであった」(中村粲『大東亜戦争への道』展転社p.608)

この日記の下線部分は何を意味するのか。普通に考えれば、ドイツ参戦に失敗したアメリカは日本にターゲットを絞り、経済制裁とハル・ノートで日本が戦わざるを得ない状況にまで追い詰めた上で、最初の一発だけは日本に打たせてから参戦するという方針が決まっていたということだろう。ルーズベルトは初めから日米和平などは考えていなかったと思うのだ。

こういう議論をすると、必ず『陰謀論』とレッテルを貼る人がいるのだが、アメリカやイギリスにはルーズベルトが陰謀を考えていたという証言や記録がいくらもあり、歴史上の重要人物が自ら自国に不利なことを書いているのだ。普通に考えれば、陰謀がなかったと考える方が不自然だと思えるくらいである。

開戦に至る日米交渉に関する日本側の暗号電信などが、事前にアメリカ側に傍受され解読されていたことは常識である。

スティネットの『真珠湾の真実』という本には、ルーズベルトが刻々と真珠湾に向かっている日本軍の動きを知っていたことを、膨大な資料を掲げて実証している。

真珠湾海図

たとえば、この本の第9章を読むと、ヒトカップ湾から南雲中将の機動部隊が北太平洋に向けて出発した11月25日(ワシントン時間)の1時間後に、米海軍作戦本部はキンメル宛に「太平洋を横断する(米国及び連合国の)船舶の航路はすべてトレス海峡(ニューギニアとオーストラリアとの間の海峡)とする」との電報を出している。このことは、北太平洋を真空海域にし、日本海軍の進路を妨害するなという事を意味する。
その2週間前にはキンメル太平洋艦隊司令長官が疑心暗鬼のあまり、ハワイ北方海域での日本機動部隊の捜索を命じたのだが、ホワイトハウスは直ぐに探索を中止し、艦隊を北太平洋海域から真珠湾に戻すことを指示している。これは日本軍の真珠湾攻撃を成功させるためのものと考えるのが自然であろう。
その命令にキンメルが抗議した公文書も存在しているようだ。

またルーズベルトの前の米大統領であったフーバーまでもが、ルーズベルトのことを「対ドイツ参戦の口実として、日本を対米戦争に追い込む陰謀を図った『狂気の男』」と批判しているのだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111207/amr11120722410009-n1.htm

フーバー回顧録

フーバーの回想録「Freedom Betrayed(裏切られた自由)」の原稿は、フーバー自身が生前に出版することを希望しながら封印されて、死後47年経った昨年12月にようやくアメリカで出版されたばかりだ。この回想録に関する論文が一部紹介されているが、たとえば対日経済制裁についてはフーバーはこう書いている。
「…ルーズベルトが犯した壮大な誤りは、一九四一年七月、つまり、スターリンとの隠然たる同盟関係となったその一カ月後に、日本に対して全面的な経済制裁を行ったことである。その経済制裁は、弾こそ撃っていなかったが本質的には戦争であった。ルーズベルトは、自分の腹心の部下からも再三にわたって、そんな挑発をすれば遅かれ早かれ(日本が)報復のための戦争を引き起こすことになると警告を受けていた」
http://gekkan-nippon.com/?p=2969

またイギリスのチャーチル首相は『第二次世界大戦回想録』の中で、真珠湾攻撃のニュースを聞いて、日本軍が勝利したにもかかわらず、これで強力なアメリカの参戦が決まったと述べたあと、「戦争の結果については、もはや疑いようもなかった」と勝利を確信したことが書かれている。次のURLが該当のページである。
http://ksrd.yahoo.co.jp/PAGE=DT_SOLVED/OUTLINK=1/QID=1123030181/AID=65995847/SIG=12eoivcer/EXP=1339305045/*-http%3A//www.loc.gov/exhibits/churchill/images/wc0142_1s.jpg
この言葉は誰が読んでも、チャーチルが、アメリカの参戦を妨げていた中立法の束縛がとれたことを喜んだと考えるしかないだろう。

真珠湾地図

陰謀があったという説が正しい説に立てば、わざわざ真珠湾に太平洋艦隊を並べて見せたのは『オトリ』だということになるのだが、そのことは開戦当時の太平洋艦隊司令官セオポルト少将が『真珠湾の秘密』という本で明言し、証拠も上げていることである。

真珠湾

日本軍による真珠湾の奇襲である程度の被害が出なければ、世論を開戦に導くことはできないとのアメリカの計算があったのではないか。日本軍による奇襲により、アメリカは戦艦5隻沈没、航空機188機破壊、戦死者2345名などの損害が出たのだが、それによってアメリカは中立法の束縛から離れて、即日にわが国に宣戦布告している。
一方、ドイツは日独伊三国同盟によって、日本より少し遅れてアメリカに宣戦布告をし、このことによって、アメリカは堂々と第二次世界大戦に参戦し、日本だけではなくドイツとも戦ってイギリスを援けることのできる大義名分を得たのである。
先程紹介した、イギリスのチャーチル首相が『第二次世界大戦回想録』の中で、勝利を確信した理由がここにある。

アメリカは、わかりやすく言えば、裏口から第二次世界大戦に参戦した。そのためにわが国は経済制裁で追い詰められ、アメリカはハワイの米国艦隊を犠牲にしたというのが正しい解釈ではないかと考えている。
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Comment
アメリカの陰謀
真珠湾攻撃は、アメリカに筒抜けだった。アメリカ輪、日本に先に攻撃させたかったのだ。
Re: アメリカの陰謀
そのとおりなのですが、このように当時の資料から明らかな事であっても、アメリカにとって都合の悪いことは歴史の叙述から消されてしまっています。
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平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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