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桜の咲く古民家の風景を求めて

最近大きなテーマばかりを書いてきたので、たまには息抜きで今年の桜を話題にすることにしたい。
有名なお花見スポットはどこへ行っても、いつ行っても観光客が多すぎて、なかなかいい写真が撮れない。できれば屋台の店舗がなくて、観光客が比較的少なくて、昔と変わらないような風景の中で静かに桜を楽しみたいと思う。

そんな場所を伝えたいと思って昨年は龍野城を紹介したが、今年は大阪府豊中市の服部緑地公園の一角にある「日本民家集落博物館」に行ってきた。
この場所は梅、桜、竹、柿などの樹木や草花に囲まれた約3万6千㎡の敷地内に、北は岩手県「南部の曲屋」から南は鹿児島県「奄美大島の高倉」まで12棟の民家が、自然な環境の中で移築されていて、都心でありながら四季折々の古き良き日本の風景を楽しめる場所である。
アスファルトやコンクリートのようなものが広い敷地内に全くと言っていいほど存在せず、敷地の中にタンポポや菜の花が咲き土筆が生えている昔のままの自然に近い環境の中で、立派な木造の古民家が堂々と建っているのが良い。

桜の木が特に多いというわけではないが、茅葺の古民家の周りに適度に配された桜が咲く時期はなかなか美しい。4月8日に訪れたのだが、この日で5~7分咲き程度だったのでまだしばらくは楽しめるだろう。

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ここが「日本民家集落博物館」の入り口。江戸時代中期に建てられた河内布施の長屋門を移築したものであるが、この建物は元衆議院議員で財務大臣などを務めた塩川正十郎氏の自宅の一部を、寄贈により移築されたとある。ここで入場料500円を支払う。

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入り口近くの桜は7分咲きといったところ。

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右に折れると、江戸時代後期に建てられた堂島の米蔵がある。青い空に白壁と桜がなかなか良く似合う。

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奥に進むと江戸時代中期に建てられた飛騨白川の民家(旧大井家住宅)がある。
関西電力の寄贈とあったが、鳩ケ谷ダム建築時に湖底に沈む大牧部落から昭和31年に移築されたとのことである。かなり大きな民家で、現在国指定重要有形民俗文化財になっている。
むかし白川郷では、長男のみが嫁取りをし、弟妹たちは通い婚で夫婦はそれぞれの生家で住んで別居生活をしていたそうだ。その場合、生まれた子どもは母親の実家で育てられるというしきたりであったので、多いところでは30人から40人の家族が一つ屋根の下に住むこともあったという。この旧大井家住宅も10人から20人の大家族であったらしい

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すぐ近くにあるのは摂津能勢の民家(旧泉龍三宅)。江戸時代初期の建築で国指定重要文化財になっている。
入母屋造りの妻入で内部は縦に二分されて片側を土間、片側を部屋にしている。この種の民家は大阪府北端の能勢地方から、丹波・日本海にかけて分布して、この旧泉家住宅はその民家の中でも最古のものだそうだ。

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この建物は香川県小豆島の農村歌舞伎舞台。安政6年(1859)に建築されたもので、現在大阪府の指定民俗文化財になっている。
小豆島は江戸時代から明治時代にかけて農村歌舞伎が盛んで、島内にはこのような舞台が20棟以上あったという。この舞台の移築が決まってから昭和37年に吉田部落では14年ぶりに公演が行われお別れ公演としたそうだ。
私はまだ見たことがないのだが、小豆島の肥土山地区や中山地区では今も5月と10月に農村歌舞伎(県指定無形民俗文化財)が続けられているようだ。
島の子供たちが春休みを返上して稽古に取り組む姿が今年の産経新聞で報道されている。地域ぐるみで300年にわたる伝統文化を継承していくことは大変な苦労があることだろうが、生まれ育った地域に全国に誇れる文化があるということは素晴らしいことだ。このような伝統文化を守る取り組みにより、世代を超えた住民同士の絆が自然に育まれていく仕組みが残されていることは羨ましくもある。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120331/ent12033120030014-n1.htm
地元の方が作られた熱いサイトもある。公演日がネットなどで公開されていたら、それを目当てに観光客が集まるのではないだろうか。私も一度行ってみたいと思う。
http://www.geocities.jp/oputoyamanaka/takaha/nousonkabuki/

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次に紹介するのは岩手県の南部の曲家(なんぶのまがりや)。江戸時代中期の建築で、盛岡市の南西にある矢巾町(やはぎちょう)という町に建てられていた旧藤原作等氏の住宅を昭和39年に移築したもので、現在は大阪府の指定有形文化財となっている。
母屋とうまやをつなげてL字型の建物になっているので「曲家」となっている。馬を飼うための家として「曲家」が発達し、母屋の土間には囲炉裏があって囲炉裏に火を燃やすと暖気が厩までいきわたるようになっているのだそうだ。
昨年越中五箇山の村上家住宅で、火をくべた囲炉裏をかこんで当主の方から説明を聞いたことをこのブログで書いたが、この時は囲炉裏というものはなかなか良いものだと思った。昔の家は家族が向かい合ってお互いの顔を見て話をするのが当たり前の生活であったのだが、現代の家族は大事なものを失ってはいないだろうか。

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この民家は越前敦賀の南部、湖北地方に近い地域にある杉箸という集落にあった旧山下繁氏の住宅を昭和38年に移築したもの。江戸時代後期の建築で、この民家も大阪府の指定有形文化財となっている。
豪雪地帯であり、雪の重さに耐えられるよう太い梁材が用いられ、外側の柱は土壁にぬりこめられて補強されている。

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この民家は奈良県と和歌山県の県境にある十津川村にあった旧丸田家住宅を昭和37年に移築したもの。文政6年(1823)の建築で、この民家も大阪府の指定有形文化財となっている。
十津川やその周辺は杉の産地として知られ、屋根には杉材を薄く削いで厚さ5mm、30cmのソギ板を作ってそれを少しずつずらして重ねて竹釘で固定するソギ葺きという方法でつくられているのだそうだ。

江戸幕末期にこの丸田家の当主であった丸田藤左衛門(まるたとうざえもん:1805~1869)は尊王攘夷思想に傾倒し、坂本龍馬や大村益次郎、西郷吉之助[隆盛]らの志士達と親交があり、国事を議論した人物とのことである。
明治に入って神仏分離令が出た際には、十津川郷では神を敬い仏法を排した藤左衛門の果断により徹底的に廃仏毀釈が行われ、50以上あった十津川郷の全ての寺院が消えたのだそうだ。
http://www.totsukawa-nara.ed.jp/bridge/guide/person/pn_022.htm
また、この丸田家住宅のトイレには刀懸けがある。どことなく幕末・維新期の緊迫感が伝わってくる民家である。

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この民家は、長野県と新潟県の県境にある豪雪地帯の秋山郷(あきやまごう)にあった、旧山田家住宅である。建築時期は江戸時代後期で、中世の趣を残した貴重な建物として国の重要文化財に指定されている。
土壁は雪に弱く冬には茅束で作った雪囲いを家の周りにめぐらさなくてはならないのだが、秋山郷では土の壁は贅沢であり、柱にじかに茅束を結いつけた茅壁(かやかべ)といわれる壁の家が昭和30年代まで残っていたのだそうだ。

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中に入ると床板を貼らずに地面にムシロを敷いただけの土座住まいで、隙間風もなく、囲炉裏の熱がじかに地面に伝わって暖かさを保ちやすいのだそうだ。
岩波文庫に『北越雪譜』という本がある。この本の著者である鈴木牧之(すずきぼくし:1770-1842)は秋山郷を訪ねて、このように記している。
「…此住居を見るに、礎もすえず掘立てたる柱に貫をば藤蔓(ふじづる)にて縛りつけ、菅をあみかけて壁とし小き窓あり。戸口は大木の皮の一枚なるをひらめて横木をわたし、藤蔓にてくヽりとめ閾(しきゐ)もなくて扉(とぼそ)とす。茅葺のいかにも矮屋(ひきヽいへ)也。たゞかりそめに作りたる草屋なれど、里地より雪はふかゝらんとおもへば力は強く作りたるなるべし、家内を見れば稿筵(わらむしろ)のちぎれたるをしきならべ納戸も戸棚もなし、たゞ菅縄にてつくりたる棚あるのみ也。囲炉裏は五尺あまり、深さは灰まで二尺もあるべし、薪多き所にて大火を焼くゆゑ也。薬鑵(やかん)土瓶(どびん)雷盆(すりばち)などいづれの家にもなし、秋山の人家すべてこれにおなじ。」(岩波文庫『北越雪譜』p.99)

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最後に紹介する民家は、宮崎県の日向椎葉にあった民家である。江戸時代末期の建築によるもので、国指定の重要文化財だ。椎葉村はかっては秘境の地で、ユニークな平家落人の伝説が伝わっている。
壇ノ浦の戦いに敗れた平家の武士たちは追っ手を逃れて、道なき道を進み、この山深い椎葉にたどり着いた。しかしこの隠れ里も源氏に知られてしまい、源氏方の那須大八郎が追討の命を受けたのだが、かつての栄華もよそにひっそりと農耕をして暮らす平家一門の姿を哀れんで追討を断念してこの地にとどまり、平清盛の末裔である鶴富姫と恋に落ちる。鎌倉からは帰還の命が下りて別れが訪れるが、その時に姫は身ごもっていた。「もし生まれる子が男子ならば下野(栃木)へよこせ、女子であればこの地で育てよ。」と言い残して大八郎は椎葉を去る。生まれた子は女の子であったので、婿を取って那須性を名乗り、子孫は代々椎葉を支配したと伝えられているという。(椎葉山由来記)
また、主人公の那須大八郎は、弓の名人で有名な那須与一の弟と伝えられているそうだ。
この伝説の舞台となった鶴富屋敷はいまも椎葉村に残されて、国の重要文化財に指定されている。また椎葉村では毎年11月の第2金曜日から3日間、『椎葉平家祭り』が行われていることがネットでわかる。
http://www.0503ak1025.net/heike.html

この「日本民家集落博物館」はいつ行っても美しく、梅の咲く頃や桜の咲く頃、新緑の時期や秋の紅葉時期もよい。「博物館」であるので昔の生活用具類などの展示もあるが、たまにイベントが行われたりもする。私が訪れた日にはたまたま民話の朗読会が飛騨白川の合掌造りの旧大井住宅で行われていた。こういう空間で民話を聴くことがとても新鮮で、不思議と話の中に引き込まれていった。

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花見は仲間と酒を飲んで楽しむのも良いが、古民家とともに見る桜はなかなか味わい深いものがある。この博物館の外に出ても、服部緑地公園には桜の木が多くて、結構楽しめる場所である。

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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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