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津山の文化財を訪ねた後、尾道の桜を楽しむ

津山の「樹庵」の食事を終えて、午後は津山の文化財を巡る計画を立てていた。

最初に訪れたのは、美作一の宮の「中山神社」。ご祭神は鏡作(かがみつくり)命・大己貴(おおなむち)命・吉備津彦(きびつひこ)命である。

現地の案内板によると、こう書かれている。
「中山神社は、慶雲四年(707)の創建と伝えられる美作国の一宮です。『延喜式』にも載せられた式内社で、『今昔物語』には『今昔(いまはむかし)、美作国ニ中参(中山)・高野(こうや)ト申(もうす)神在(かみまし)マス。』」と記され、『一遍上人絵伝』にも弘安9年(1286)の春に一遍上人が美作一宮(中山神社)に詣でた様子が描かれるなど、古来より広くその名を知られていました。」

また津山の情報サイト『津山瓦版』では、
「…貞観六年(864)官社に列し、延喜式では美作国唯一の名神大社で此の国の一宮とされ、永保元年(1081)には正一位の神階を授かる。
平安時代の代表的説話である『今昔物語』には当社の猿神伝説があり、鎌倉時代の後白河法皇の御撰にかかる『梁塵秘抄』では関西に於ける大社として安芸の厳島、備中の吉備津と共に肩を並べている。
国家非常時(元寇など)には勅命により特に全国七ヶ国の一宮(武蔵・上野・伊豆・駿河・若狭・美作・肥後)を選び、国家安穏を祈願せしめ当社も其の中に選ばれて祭祀を厳修したとされる。
建武中興破れて約四百年間は、美作国中戦乱の巷と化し、永正八年(1511)と天文二年(1533)の両度に祝融の厄に遭い宝物・古文書等悉く焼失したが、永禄二年(1559)に至り、出雲国尼子晴久が戦捷報賛の為、社殿を再建し歴代藩主の崇敬厚く、『一宮さま』と親しまれ、明治四年(1871)六月には、国幣中社に列格す。」とある。

「名神(みょうじん)大社」の「名神」とは、神々の中で特に古来より霊験が著しいとされる神の称号で、Wikipediaにそのリストが掲載されている。美作国ではこの中山神社だけが該当している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E7%A5%9E%E5%A4%A7%E7%A4%BE

また『梁塵秘抄』には、中山神社が出てくるこんな今様がある。
「関(逢坂関)より西なる軍神(イクサガミ)、一品中山安芸なる厳島 備中なる吉備津宮                             播磨の広峰惣三所 淡路の岩屋には住吉西宮」(249番)
古い記録を辿っていけば、昔の中山神社は関西一円で名を知られるような、とても大きな神社であったのだ。

中山神社境内

随分歴史のある神社なので、鬱蒼とした鎮守の森の中に建てられていると思っていたのだが、境内は驚くほど木々が少なくすっきりしていたのに驚いてしまった。
地元の方の話によると以前は大きな木に囲まれた参道であったが、数年前の台風で御神木がかなりなぎ倒されてしまって、すっかり風景が変わってしまったのだそうだ。
次のURLに神木が倒れる以前の中山神社の写真が出ているが、日の差し込まないような涼しげな参道こそが歴史ある中山神社に相応しい。
http://www.genbu.net/data/mimasaka/nakayama_title.htm

中山神社神門

御手洗川の石橋を渡ると神門があるが、この門は津山城二ノ丸の四脚門(よつあいもん)だったもので、津山城廃城後の明治7年(1874年)に中山神社に移築されたのだそうだ。現在は津山市の重要文化財に指定されているという。

中山神社本殿

拝殿の奥にある本殿は、尼子晴久が1559年に再建したもので国の重要文化財に指定されている。本殿は「中山造」と呼ばれる美作地方独自の神社建築様式で、中山神社本殿がその最古の例なのだそうだ。「中山造」は「方3間の入母屋造妻入の身舎正面に、1間の向唐破風の向拝を付す」と言葉で説明してもわかりにくい。次のURLで「中山造」の特徴が画像でわかる。
http://blog.livedoor.jp/kurino30/archives/52418435.html

そのような歴史的に由緒のある美作国の一の宮にしては少し境内が狭すぎる印象を受けた。
境内のすぐ近くまで民家が建っているのを不自然に思ったのだが、中山神社も多くの寺社と同様に、境内地などを売却しながら、本殿の修復費用の一部を捻出して文化財を維持してきたのではないだろうか。

拝殿の横に、「御本殿修復募金のお願い」という立札があった。以前にも書いたことがあるが、国の重要文化財だからといって修復費用の全てを国が負担してくれるわけではない。
国や県から多くの援助があったとしても、本殿の修復の一部の資金は自前で集めなければならないのだが、それが半端な金額ではない。
建物としての歴史的価値を維持するために、宮大工を使い、大木や檜皮などの伝統的な建築資材を用いねばならず、そのためにかなりの資金が必要になる。さらに文化財指定のない建物についての維持管理についても多くの資金が必要で、それに対しては国や地方の資金は当てに出来ず、自前で集めることが必要になる。しかしながら、多くの地域で地元の産業が衰退して働く場所がないために若い世代が次第に地元を離れ、年金世代が中心になってしまってはその修復に必要な資金を作ることが容易ではなくなってしまう。

1300年以上の歴史があり、鍛金・冶工・採鑛等の守護神、農耕・牛馬の守護神として広く崇敬されてきた中山神社ですら、文化財の価値を維持することが次第に難しくなっているのだが、全国の有形・無形の文化財で同様な事が起こっていると言って良い。
このままでは地域の経済が衰退して、長らく寺や神社などを支えてきた家々の収入が先細りとなり、若い世代の多くが故郷を離れていってしまっては、いかに重要な文化財であったとしても、その価値を維持することがますます難しくなっていくだろう。この流れをどこかで歯止めをかけられないものか。
文化財を後世に残すためには、地元に若い世代が生活できるだけの仕事がなければならないのだが、多くの都会資本は「地産地消」を無視して、地域の生産者の仕事の多くを奪ってきたのではなかったか。

総社宮

中山神社に続き、津山市にある国の重要文化財を予定通り訪ねていく。
次に訪れたのは美作総社宮(祭神:大国主神)。この神社の本殿は永禄5年(1562)に毛利元就が
再建し、明暦3年(1657)に森長継が修築したもので、国の重要文化財に指定されている。 この建築様式も「中山造」である。

鶴山八幡宮

総社宮から南東へ700mほど行くと、鶴山八幡宮(祭神:応神天皇・神功皇后・玉依姫命)がある。昔は津山城のある鶴山にあったそうだが、津山城築城後に移転されたという。この本殿も「中山造」で、国の重要文化財に指定されている。

鶴山八幡宮から南東へ700mほど進むと、津山高校がある。明治33年(1900)に落成したこの学校の旧本館が国の重要文化財に指定されている。

津山高校

木造の校舎はどこか温かいものを感じさせてくれる。この場所はNHKの連続テレビ小説「あぐり」のロケ地にもなったそうだ。

ここから北東に700mほど進むと、国名勝の「衆楽園」がある。
聚楽園

この庭園は津山藩主森長継が明暦年間(1655~1658)に京都から作庭師を招いて築造した近世池泉廻遊式の大名庭園で、松平家が津山藩主となった元禄11年(1698)から幕末までは、家臣や他藩からの使者を謁見するための御対面所、または藩主の私的な別邸として使われ、明治3年(1870)に衆楽園と名付けて一般公開したのだそうだ。昔は現在の3倍近く広い庭園であったそうだが、今では庭園から周囲のビルが見えるのは残念だ。

津山は城下町だけあって、有名な菓子匠がかなりあるようだ。

くらや

お土産用に津山の和菓子を買いたくていろいろ事前に調べたのだが、迷った末に「くらや」というお店に行く。この店を選んだのはB`zのボーカリスト・稲葉浩志さんのお兄さんが代表取締役をしておられるので興味を覚えたからだが、創業明治元年の老舗で、全国菓子博覧会などで多くの受賞歴がある。ちなみに稲葉さんは津山の出身で、津山高校の卒業生だそうだ。

「くらや」でお土産を買い込んでから、宿泊先の広島県尾道市に向かう。尾道市には「日本さくら名所100選」に選ばれている千光寺公園がある。
津山から2時間程度で宿泊先の西山本館につき、宿の主人から翌日の天気が怪しいので、夕食前に千光寺公園の桜を見に行くことを薦められた。

千光寺公園

ロープウェイで千光寺山の頂上に登れば、ここも桜が満開だった。
朝の津山の桜も良かったが、千光寺公園の桜も素晴らしい。心地よい風に吹かれて、山上から眺める瀬戸内海の景色も格別だった。尾道水道の対岸の島が向島だ。

千光寺公園2

夕刻なのだが、まだまだ人が増えてくる。ライトアップされた千光寺公園の桜を見たい気もしたが、夜桜見物は別の場所を予定していたので、徒歩で千光寺山を下りて宿に向かう。

西山本館

西山本館は地元の老舗旅館で、レトロな雰囲気がとてもよかった。夕食はもちろん瀬戸内で今日獲れたばかりの魚介類がふんだんに出て、大満足だ。
本当はもう少しお酒を飲みたかったのだが、せっかく桜の時期に訪れることができたのだから、宿から1kmくらい歩いて西国寺の夜桜見物に行くことにした。ここは行って良かった。

山門をくぐると桜のトンネルだ。心静かに木々の桜を見ながら石段を登って行くと、金堂があり、さらに石段を登ると持仏堂があって、その前にある枝垂れ桜が満開だ。

IMG_7566.jpg

また山を背景にしてライトアップされた三重塔がとても美しい。

IMG_7573.jpg

お寺の夜桜見物は随分久しぶりだが、わが国の伝統的建築物の美しさを堪能できた。
友人と酒を酌み交わして夜桜を楽しむのもいいが、美しい文化財に囲まれた歴史的空間で、古い時代を偲びながら静かに楽しむ夜桜は格別だった。かなりハードな旅程だったが、大満足の一日だった。

翌日は一日中大雨で、所用を済ませて早目に帰路についたが、天気のいい時に花見を済ませておいて本当に良かった。
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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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