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郡上八幡の歴史と文化と古い街並みを楽しんで

毎年7月には避暑と歴史散策をかねて車で旅行することにしているのだが、今年は白川郷と長良川温泉に宿をとり、郡上(ぐじょう)八幡から白川郷、岐阜市、関ヶ原古戦場などを周遊してきた。
梅雨が明けていなかったので雨が心配だったが、なんとか予定していた場所を観光することが出来た。

ある読者から、カーナビで登録できるように電話番号や時間の目安も書いて欲しいとの要望があったので、今回の旅行からなるべくその要望に応えることにしたい。

早朝に自宅を出て、9時過ぎに最初の目的地である郡上八幡城(0575-67-1819)の駐車場に到着した。

郡上八幡城

まずこの城の歴史を簡単に振り返っておこう。
戦国時代末期、郡上一円は東氏(とうし)によって支配されていたが、永禄2年(1559)に八幡山の上に砦を築いた遠藤盛数(もりかず)によって東氏が滅ぼされてしまう。この遠藤盛数が築いた砦が郡上八幡城の起源で、その後遠藤盛数の長男・遠藤慶隆(よしたか)が城主となってこの地を治めたのだが、慶隆は賤ヶ岳の戦いで羽柴秀吉に敗れ、ついで稲葉貞通が城主となり城郭を修築して天守台等を設けたという。やがて、関ヶ原の戦いが起こり、家康についた遠藤慶隆は再び城主に返り咲いている。
その後元禄5年(1692)、遠藤氏の5代目の常久が幼少で亡くなり改易処分となって、井上氏・金森氏が入封。
金森頼錦(よりかね)の藩主の時代に、農民の困窮甚だしく宝暦義民の一揆がおこり、そのために金森家は改易され、代わって丹後国宮津城主の青山幸道が城主となり、その後の藩政は安定したという。
残念ながらこの城は、明治4年に廃城となって取り毀されてしまったのだが、現在の天守閣は昭和8年(1933)に当時の大垣城を参考に木造で再建されたのだそうだ。
全国で再建された城はいくつかあるが、木造で再建された城は非常に珍しいという。現在は石垣が岐阜県史跡に指定され、天守閣も郡上市の有形文化財に指定されている。

郡上八幡城と山内一豊・千代像

山麓には山内一豊と妻千代の銅像があるが、千代は初代郡上八幡城主。遠藤盛数の長女であるという説が有力なのだそうだ。

郡上八幡博覧館(0575-65-3215)の郡上踊り実演が11時にあるので、近くの駐車場に車を停めて、1時間20分程度市街地を歩くことにした。
郡上八幡観光地図

市街地の散策は次のURLの地図が参考になる。
http://www.gujohachiman.com/kanko/pdf/city_map_j2.pdf

郡上八幡は古い街並みが美しく残されていて、歩いていて楽しい。また防火などを目的に築造された水路がめぐらされて、今も生活用水として利用されているという。

郡上八幡いがわの小径

上の画像は「いがわのこみち」だが、川には鯉が泳いでいて、こんな細い道を歩いていると妙に癒されてくる。

郡上八幡旧庁舎

「いがわのこみち」の近くにある、「郡上八幡旧庁舎記念館」。平成6年までは八幡町の役場として使われていたこの建物は、昭和11年に建てられた洋風建築で、平成10年に国登録文化財に指定されている。レトロな街並みにこの建物は良く似合う。
この記念館前の道路は今年も4回にわたり郡上踊りの会場となり、その夜は道路の車の通行が規制され屋台が組まれて、地元の人だけではなく多くの観光客も交じって、夜遅くまで踊り続けるのだそうだ。

郡上八幡やなかの水の小道

さらに西に行くと「やなか水のこみち」がある。黒い玉石を敷き詰めた道と水路と柳の並木と古い家が絵になる景色である。こんな道を、下駄を鳴らして歩いてみたいものだ。
この美しい道沿いに、「やなか三館」と呼ばれる、小さな美術館や民芸館がある。
郡上八幡出身の画家であり造形作家の水野政雄さんの作品が集められている「心の森ミュージアム遊童館」に入ったが、子供や動物たちの人形や、郷土をモチーフにした絵や人形に心が和んだ。

郡上八幡宗祇水

宮ヶ瀬橋を渡って左に折れると、環境省選定「名水百選」の第一号となった「宗祇水」がある。室町時代に連歌の第一人者であった飯尾宗祇が、この場所で郡上領主の東常縁(とうつねより)と歌を詠み交わしたことからこの湧水を「宗祇水」と呼ぶようになったという。
東常縁は藤原定家・俊成にはじまる二条家歌道の流れをくむ著名な歌人でもあり、その東常縁を、『新撰菟玖波集』を編んだ連歌の第一人者である飯尾宗祇が都からわざわざ訪ねに来たということはすごいことである。宗祇は郡上にしばらく滞在して東常縁より古今伝授を受け、この清泉のほとりで別れを惜しんだのだそうだ。
この地で、東常縁が宗祇に託した餞別の句が残されている。
「もみじばの流るる龍田白雲の花のみよしの思いを忘るな」
また明建神社と那比新宮神社には二人の連歌碑が建立されているという。

郡上八幡古い街並み

宗祇水から元の道に戻り北へ歩くと鍛冶屋町、職人町の古い街並みが美しい。
道の奥に見える寺は長敬寺(ちょうきょうじ)といい、慶応4年(1868)江戸城開城の際に、郡上藩士45名が「凌霜隊(りょうそうたい)」を編成し、佐幕派の中心・会津へ救援隊として出発し、会津若松の「白虎隊(びゃっこたい)」とともに政府軍と戦ったという。
9月に会津は降伏し、凌霜隊士は郡上に護送され獄舎に入れられたのだが、厳しい獄舎の生活に犠牲者が出るのをみた城下寺院の嘆願が聞きいれられて明治2年にこの寺に移され、翌年に釈放されたものの、彼らの一生はかなり厳しいものだったようだ。

郡上八幡博覧館

この長敬寺を右折すると、元に戻って郡上八幡博覧館に到着する。
館内には郡上八幡の自然や歴史や文化を紹介するパネルや工芸品などの展示がなされているが、一番印象に残っているのはやはり「郡上踊り」の実演である。たった15分間程度の実演だが、結構楽しませてくれる。この実演は、季節に関係なく毎日11時、13時、14時、15時の4回あるので、その時間に合わせて訪問されると良い。

郡上踊り

郡上踊りの歴史は古く、江戸時代に初代藩主の・遠藤慶隆が領民親睦のため奨励したのが発祥という説もあれば、江戸時代中期の藩主・青山氏の時代(1758~)に百姓一揆(郡上一揆)後の四民融和をはかるため奨励したのが発祥という説もあり、どちらが正しいのかはよく分からないが、この踊りが地元で生きる人々の誇りとなり、それが世代を超えて地域の人々の絆を強める仕組みの一つになっていったのだと思う。

郡上踊りは毎年7月中旬から9月上旬まで延べ32夜にわたって、旧庁舎記念館前やら城山公園やら、開催日ごとに会場を移して行われ、特にお盆の8月13日から16日には明け方まで夜通しで踊り続ける『盂蘭盆会(徹夜踊り)』が行われる。
20120715143536.jpg

この「郡上踊り」は、徳島県の「阿波踊り」・秋田県の「西馬音内(にしもない)盆踊り」日本三大盆踊りの一つとして数えられ、平成8(1996)年には国の重要無形民俗文化財に指定されている
のだそうだ。
今年のスケジュールは次のURLにある。
http://www16.plala.or.jp/gujo/newpage2odori15.html

お盆の徹夜踊りには踊り客は4日間で延べ25万人とも言われ、郡上八幡町の人口16千人と較べれば、いかに多くの観光客が踊りに参加しているかが良くわかる。この時期には観光客・宿泊客は郡上八幡の人口の40倍近く膨れ上がるという。
また、踊りのうまい観光客には、「郡上踊り保存会」から郡上踊りの免許状が交付されるそうだが、そういうちょっとした工夫がリピーター観光客を増やしていることに繋がっているのだと思う。

同じ曲で、何度も踊り続けてはそのうち飽きてしまうだろうと誰でも考えるところだが、郡上踊りの曲は、踊る人が飽きないように曲目が10種類もあるのだそうだ。
「郡上の八幡出てゆくときは、雨も降らぬに袖しぼる」の唄い出しで知られる「かわさき」から始まり、「春駒」、「三百」、「ヤッチク」、「げんげんばらばら」、「猫の子」、「さわぎ」、「郡上甚句」、「古調かわさき」、「まつさか」と、テンポの速い曲もあればゆっくりとしたものもあり、踊り疲れないように曲の順番がよく考えられているのだという。

今年の7月12日に旧庁舎記念館前で行われた今年最初の郡上踊りの動画を見つけたので紹介したい。「春駒」という曲はとてもテンポの良い曲で、こんな曲を聴けば私でも踊りたくなってくる。今度来るときは、是非踊りの輪の中に入ってみたいものである。


しかしながら、この歴史と文化の香りあふれる郡上八幡も若い世代が都会に流出するばかりで、人口の減少傾向が続いているという。
このブログで何度も書いているのだが、地方の伝統文化がその地域で世代から世代に継承されていくためには、若い世代が地元に残って家族を養えるだけの収入が得られる仕事があることが不可欠である。
高度成長期以降のわが国は、地方の生産者や小売店を非効率であると切り捨てて、地域の経済循環を破壊し、地方を衰退させてきた。
都会資本の大企業が世界から安い原料を集めて大量に消費財を生産し、都会資本の大手流通企業が市場としての地方に店舗網を広げていくことを後押しするような経済施策が続き、そのために地方に住む人々の多くが地元での収入源を失い、稼ぐ場所を求めて若い世代の都会への人口流出が止まらなくなっているのだが、そろそろこの流れを止めないと、郡上八幡に限らず多くの地方の固有の文化が衰退して、いずれその観光価値をも失っていくことになりはしないか。

そうならないためには、つまるところ都会に住む人々が、地方で代々生産や販売に従事している人々に直接お金が落ちるように、今よりも配慮した消費行動をとることが不可欠なのだと思う。たとえば、少々高くても国産品にこだわり、大手メーカーの商品よりも地方の産品を求め、大手流通の店舗で買うウェイトを減らしてネットで地方の農産物や加工品を買ったり、ドライブしたり旅行地で地元の産直や商店などで買い、地元の食材にこだわった料理屋などで食事をすることが、地方の暮らしを豊かにし、地方の素晴らしい文化を残すことにつながるのだと思う。
それと同時に地方の農漁業従事者や食品加工業者などは販売ルートを見直すべきだと思う。大手流通に不本意な価格で回すことよりも、ネットや産直などで都会の消費者に直接販売する努力をしていけば、地方はもっと豊かになれるのだと思う。

地方に住む若い人が都心に出て就職しても、住居を買うために多額のローンを組んで、生涯所得のかなりの部分をローン返済の為に失うことになる。
地元である程度収入が得られる目途がつくならば、先祖代々の家があれば収入が少なくともなんとかなるし、子供を育てるのも安心だし、通勤地獄のない生活や、豊かな自然があり親族や昔なじみが何人もいる地元で生活することができるメリットははかり知れない。店舗が少ないのは仕方がないが、今ではネットでほとんどの商品を買うことが可能である。
薄給で都会で働くことを余儀なくされている若い世代の中には、田舎で暮らすことの方が幸せな生活が出来る可能性が高いと考える人がこれから増えていくのではないかと思う。

まつい

郡上八幡博覧館の売店でいくつかのお土産を買い込んだ後、近くの蕎麦屋さんを紹介してもらった。
入ったのは手打ちそばの「蕎麦正まつい」(0575-67-0670)というお店で、博覧館から歩いて3分程度の距離で駐車場もある。

郡上八幡 まつい

メニューは冷たい蕎麦だけで、私は辛味大根を使用した「おろし蕎麦」を注文したが、飛騨荘川で育つ玄そばを用い、郡上八幡の清水で打ち上げた冷たいそばが辛味大根とよく合うのである。蕎麦の香りと、しっとりとした食感と、心地よい麺のコシを楽しんで、大満足だった。今度来るときも是非立ち寄りたい店である。<つづく>

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【ご参考】
このブログでこんな記事を書いています。よかったら覗いて見てください。

飛騨地方を舞台にした悪代官と義民の物語
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-131.html

「大原騒動」の史跡や飛騨の国宝や渓谷などを訪ねて白骨温泉へ
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-154.html

白骨温泉から奈良井宿、阿寺渓谷を散策のあと苗木城址を訪ねて
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-165.html

苗木藩の廃仏毀釈と、その史跡を訪ねて
http://shibayan1954.blog101.fc2.com/blog-entry-179.html

日本百名城の一つである岩村城を訪ねた後、国宝・永保寺に立ち寄る
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No title
こんにちは。郡上八幡、いいとこですね。私は愛知出身なのですが、何故か運動会に郡上躍りと春駒をさせられました。はっるこまはるこまー♪の節がまだ残ってます。

昔は名古屋城が一番!と思っていたので郡上八幡城の趣が解らずもったいないことをしました。
せせらぎの聞こえる郡上八幡の町をまた歩いてみたくなりました。ありがとうございます。
Re: No title
こんばんは。

郡上八幡は、住んでおられる人々が地元を愛しておられることが町のあちこちで感じられるところですね。古いものが古いままに、美しく残されています。

私の実家の近くも、今の自宅の近くも、盆踊りをやっていません。都心に近い場所では、どんどんマンションが建って、地域と関係のない人が住み着いて、地域に住む人々との関係が希薄になるばかりです。

祭や踊りなどの伝統が残されている地域にいくと、時々羨ましく思うことがあります。これからも、地域の特色を末永く残してほしいものです。
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