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日光二荒山神社から国宝・大猷院へ~~日光観光その3

日光東照宮の拝観を終えて、上新道を歩いて二荒山神社の楼門に向かう。

二荒山神社 楼門

楼門をくぐり、鳥居を過ぎると右側に社務所があるが、前回記したとおり、かつてはこのあたりに三仏堂があり、明治初期の神仏分離により輪王寺の境内に移築されてしまったのである。

前回の記事で、江戸時代の日光を描いた『木曽路名所図会 巻之六』の挿絵を紹介したが、拡大してもう一度見てみよう。

木曽路名所図会

画像の右にある「仁王門」は現在の東照宮の表門*で、「大塔」は東照宮の五重塔である。
左端の「新宮」は現在の二荒山神社の本殿であり、その右に「三仏堂」が描かれていることがわかる。
*表門:東照宮の「表門」には仁王像が存置されており、明治の神仏分離までは「仁王門」と呼ばれていた。「仁王」とは寺院内に仏敵が入り込むことを防ぐ守護神であるため、神社である東照宮には相応しくないとの理由で呼称のみを変えたと考えられる。

現在の日光は次のURLの地図が、比較的分かりやすいので、上の画像と見比べて頂きたい。
http://www.mapandnews-japan.com/big_map/toshogu01_big.html

map-toshogu01.gif

誰でも疑問に思うのは、かなり昔から二荒山神社の本殿の近くに仏教施設である三仏堂が建てられたのはなぜかという点である。

『木曽路名所図会』には三仏堂は「日光三社大権現の御本地堂なり」と解説されている。
「日光三社」とは、前々回の記事で書いたとおり二荒山神社(新宮)、瀧尾神社と本宮神社(本宮)である。そして三仏堂にある三つの仏像は、木造千手観音坐像(新宮本地仏)、木造阿弥陀如来坐像(瀧尾神社本地仏)、木造馬頭観音坐像(本宮本地仏)なのである。

神仏習合思想の一つである「本地垂迹説」では、日本の八百万(やおよろず)の神々は、さまざまな仏が化身として日本の地に現われたと考え、その化身として現れた仏を「本地仏」と言い、仏となって現われた神を「権現(ごんげん)」と言う。
日光では男体山を御神体とし大巳貴(オオナムチ)命を祀る新宮(現二荒山神社)と、女峰山を御神体とし田心姫(タキリビメ)命を祀る瀧尾神社と、太郎山を御神体とし味耜高彦根(アジスタカヒコネ)命を祀る本宮神社の三社の本地仏が一堂に存置されているのが三仏堂なのである。
かつては二荒山神社を「日光三社権現」と称されたのだが、このことは、この三仏堂が「新宮」と呼ばれていた場所のすぐ近くにあったことと無関係であるはずがないだろう。神仏習合の考え方からすれば、二荒山神社の本殿や拝殿の近くに三仏堂があることは、理に適っていることなのだ。

ところで、二荒山神社で1200年以上の長い歴史のある「弥生祭」という伝統行事がある。その日程や神輿の巡行ルートを調べると、4月14日には二荒山神社の拝殿から別宮である瀧尾神社に神輿1基が出て、16日に二荒山神社に戻って来る神輿を迎える神事が行われ、17日には本宮神社に3つの神輿が渡御して戻ってくる神事が行われる。
http://www.futarasan.jp/yayoi/nittei.html

明治の神仏分離で三仏堂は輪王寺の敷地に移転されてしまったのだが、三仏堂は日光で最大の建物であり、東日本全体でもこの建物より大きな木造建築物は存在しない。
少なくとも神仏分離令が出るまでは、弥生祭における三つの神輿は三仏堂においても何らかの儀式が行われていなければ不自然だと思うし、また、この三仏堂が年間を通して多くの参拝者を集めていたことは想像に難くない。
二荒山神社は、明治の神仏分離のために日光の社寺の中では最も変質してしまったのだが、もし三仏堂が今もこの場所に残っていたとしたら、二荒山神社の観光客は現在の十倍以上あってもおかしくないだろう。

二荒山神社 本社拝殿

社務所の隣に拝殿(国重文)がある。

二荒山神社 本殿と化灯籠

参拝を済ませて、その西側から二荒山神社の神苑に入ると、右側に本殿(国重文)が見える。本殿の透塀(国重文)の脇にある鎌倉時代に奉納された銅灯籠(国重文)は別名「化(ばけ)灯籠」と呼ばれ、この灯籠に明かりを灯すと周りのものが2重に見えたり、灯籠そのものが様々な姿に変化したと懼れられ、警固の武士たちが刀で切りつけた刀傷が無数に残されている。

二荒山神社の観光を終えて、徳川第三代将軍家光公の廟所である大猷院(たいゆういん)に向かう。
家康は神となったために、日光東照宮は明治の神仏分離以降は神社とされたのだが、大猷院は東照宮とかなりよく似た建造物でありながら、輪王寺の管理下にある仏教施設であるというのはどうもピンとこない。

家光は祖父家康を崇敬し、死後は東照宮の近くに葬ることと、廟所は祖父家康を権現として祀る東照宮を凌いではならないと遺言したという。そのために大猷院は、東照宮よりは規模が一回り小さくなっている。

大猷院 仁王門2

上の画像は仁王門(国重文)だが、お目当ての一つであった二天門(国重文)が改修工事中であったのは残念だった。

大猷院 夜叉門

上の画像は夜叉門(国重文)と左右の廻廊(国重文)だが、夜叉門には四体の夜叉(やしゃ)像が置かれている。
下の画像は、烏摩勒伽(うまろきゃ)といい、金色の弓矢を携えて霊廟鎮護に当たっている夜叉で、正月の縁起物として神社などで授与される破魔矢(はまや)発祥の仏様なのだそうだ。

大猷院 烏摩勒伽

夜叉門をくぐると、いよいよ大猷院の中心部分になる。

大猷院 唐門

唐門(国重文)にはふんだんに金箔が貼られているのだが、漆黒が多く用いられてためか、東照宮の唐門よりも随分シックな印象を受ける。

大猷院 拝殿

唐門をくぐると、国宝の拝殿・相の間・本殿と続く。上の画像は拝殿で、下の画像は、逆光になってしまってうまく撮れなかったが、相の間と本殿を写したものである。

大猷院 相の間・本殿

参拝客が入れるのは拝殿までであったが、拝殿から相の間、本殿を見通すことができる。

拝殿には、教科書などでよく紹介されている狩野探幽の唐獅子図があり、天井には龍の絵が描かれ、秀光の鎧が展示されているなど見ごたえ十分である。金箔で囲まれたすごい空間なのだが、内部の撮影が禁じられていたので、日光山輪王寺のホームページの画像のURLを紹介しておく。
http://rinnoji.or.jp/precincts/taiyuin_before/naibu
構造的には東照宮にかなり似ているが、漆黒の中に輝く金銀の装飾は、東照宮に引けを取らぬ豪華絢爛で一見の価値がある。

大猷院の建物配置図

拝殿で僧侶の説明を受けている時にやたら寒く感じたのだが、普通の寺では本尊は南を向いて祀られるので本堂の正面は南向きになっていることが多い。しかしながら、この大猷院の拝殿や本殿は鬼門の方向である北東を向いているので、昼からは陽光が全く入らないことになる。寒く感じたのはそのためであろう。
ではなぜ鬼門の方向に向いているのかと言うと、北東方向には家康公を祀る東照宮の奥宮があるからだという。これは48歳で没した家光が、祖父である家康を敬愛していて、生前に「死してのちも朝夕東照大権現の側でお使え奉る」と遺言していたことによるのだと言われている。
ところが拝殿や本殿は北東に向いていても、本殿の奥壁の裏にもう一つ部屋があって、そこには釈迦三尊画像が後ろ向き(南面)に掛けられているのだそうだ。

大猷院 皇嘉門

上の画像は、奥院の入口にある皇嘉門(国重文)である。東照宮とは違い大猷院の奥の院は公開されていないため、この門は常時締められているのだが、天井には天女が舞う姿が描かれ、奥院には唐銅宝塔と拝殿があるのだという。

この大猷院は、家光の嫡子である4代将軍家綱によって、翌年の承応元年(1652)2月から大棟梁・平内大隅守応勝の指揮により造営工事が始まり、承応 2年(1653)年 4月 4日に建立されたというが、こんな豪華絢爛の建物がわずか1年 2ヶ月という短期間で完成したことは驚くべきことだ。木造建築の技術に関しては、江戸時代の方が今よりもはるかにレベルが高く、優れた技術者が多かったと思われる。
4月 9日からは家光の命日である20日にかけて、3回忌の法要が盛大に執り行われたのだそうだ。

ヴィラ・リバージュ

朝から瀧尾神社、四本竜寺、本宮神社、輪王寺、東照宮、二荒山神社、大猷院と随分歩いて疲れてしまった。他にも見たいところがないわけではなかったが、良い時間になったので、土産物を買ってから、宿のヴィラ・リバージュに向かうことにした。

ヴィラ・リバージュ夕食

夕食は、地酒や地ワインを楽しみながら、自家菜園の無農薬有機栽培で育てた採れたての野菜の盛り合わせや、日光の清流で育ったイワナや霧降高原牛のサーロインステーキなど、出てくる料理がどれも美味しく、大満足だった。
<つづく>
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若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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