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藤の咲く季節に、日野町の歴史と文化を楽しんで

先日、滋賀県蒲生郡日野町に行ってきた。日野町にはいろいろ行きたいところがあって、どうせ行くのならこの季節にと決めていた。桜や紅葉の時期も候補に考えていたが、この町には樹齢300年の有名な藤の咲く寺がある。その藤が見頃を迎えたので最初にその寺に向かうことにした。

正法寺の藤 2

その寺の名前は、正法寺(滋賀県蒲生郡日野町鎌掛(かいがけ)2145 ☎0748-52-4422)で、「藤の寺」とも呼ばれている

正法寺本堂と藤

正法寺は奈良時代に行基が開基したとされ、元禄5年(1692)に普存(ふそん)禅師が、近くの八坂神社にあった観音堂をこの地に遷して再興したと伝えられているが、この時に京都の仙洞御所から移されたという藤の苗が300年の歳月を経て今も見事な花を咲かせている

正法寺の藤

案内板によると「この藤は『ノダフジ』で、正法寺山をその昔、後光山と呼んでいたのでその名をとって『後光藤(ごこうふじ)』と呼ぶようになった。」とある。
毎年5月上から中旬に見頃を迎えるというが、今年はやや遅めのようだ。

正法寺の藤 3

境内に入ると藤の甘い香りが漂ってくる。
藤の花は今まで何度か見ているが、こんなに大きな藤棚で咲いているのを見るのは初めてだ。房の長さは、長いものは1メートルを越えるのだそうだが、うす紫色の藤が棚一杯に咲き揺れる景観は素晴しいの一語に尽きる。この藤棚を守るために、今まで多くの人々の苦労があったことだと思う。

正法寺 石造宝塔

正法寺の御本尊の十一面観音菩薩像は秘仏のため拝観できなかったが、境内に国の重要文化財である石造宝塔が残されていて、塔の背面に「正和二二年」と彫られているのが読める。案内板には「正和四年(1315)」と記されていたのが気になって自宅で調べると、「正和」という元号は六年で終っており、干支が「乙卯」なので正和四年しかありえないのだが、なぜ四年を「二二年」としたかはよく判らなかった。

日野地図

正法寺をあとにして、国天然記念物に指定されている鎌掛の屏風岩に向かう。地元の方に道を教えていただいて、歩いて15分程度で辿りつく。

屏風岩

案内板によると、「もともとは六曲屏風を立てたような巨大な岩だったが、鎌掛石の名勝で江戸期に建材用に切って搬出し、現在は約三分の一のみが残る」とある。この岩の右に、以前は直角の長い岩があと2列連なっていたということになる。

日野町鎌掛には花の名所が他にもあって、四月下旬から五月上旬にかけて花が咲くという、約4万平米に及ぶホンシャクナゲの群生地がある。ホンシャクナゲはツツジ科の常緑低木で、通常は標高800m以上の高所に自生するのだが、ここでは標高350m前後の山間に約2万本が自生していて、国の天然記念物に指定されている。もう少し早ければ斜面に大量の花が咲く景観を楽しめたのだろうが、そうなると正法寺の藤を見ることが出来ないのでどちらかを選択するしかない。
http://www.biwako-visitors.jp/event/detail/3576

屏風岩に向かう途中の道に咲く石楠花

正法寺から鎌掛の屏風岩に向かう途中で、たまたま自生のシャクナゲの花が咲いていたのでカメラに収めた。「ホンシャクナゲ群落」に行っても遅咲きの花が少しは咲いていたようなのだが、県道182号線沿いの駐車場から歩いて片道20分から30分程度かかると聞いていたので、今回は諦めた。
正法寺の藤とホンシャクナゲ群落の開花情報は、日野観光協会が次のURLに最新情報をアップしているので事前に確認された方が良い。(正法寺の藤の花房は5月20日に刈り取られる予定)
http://www.hino-kanko.jp/archives/category/flower

正法寺の駐車場から西明寺(さいみょうじ:蒲生郡日野町西明寺1238 ☎0748-52-2647)に向かう。

西明寺 本堂

この寺は奈良時代に創建され、その後何度か戦火に遭い荒廃してしまったのだが、仏像や典籍は守られ、江戸時代初期に再興されて永源寺の末寺となったとある。

事前に予約すれば拝観させて頂けたかもしれないが、本尊の十一面観音像は平安時代の仏像で国の重要文化財に指定されている。また大般若波羅蜜多経601帖が滋賀県の指定文化財だ。

西明寺の石仏群

寺の石垣の上に、近くの蓮台野から発掘されたという石仏が並べられている。(蓮台野石仏群)
案内板には「中世の大寺院であった西明寺の境内墓地蓮台野へ、近隣の庶民が火葬骨を葬って供養として造立した五輪塔や石仏であり、石仏のほとんどは阿弥陀如来像を半肉彫に陽刻している。鎌倉時代から室町時代にかけての中世庶民信仰を探る上で、この石仏群は貴重な文化財である。」と記されていた。

次に馬見岡綿向神社(うまみおかわたむきじんじゃ 日野町村井711 ☎0748-52-0131)に向かう。

馬見岡綿向神社

社伝によると、欽明天皇の時代(545年)に綿向山の頂上に祠が建てられたのを始まりとして、延暦十五年(796)に里宮としてこの場所に遷されて以降、日野の人々の信仰の中心となってきた。鳥居の奥にある建物は拝殿で、日野商人中井源左衛門が享和三年(1803)に寄進したものである。

馬見岡綿向神社 絵馬

拝殿の西側には絵馬堂があり、ひときわ大きな絵馬が飾られているのに驚く。この絵馬は蒲生氏郷公が生まれたお祝いとして殊に盛大に行われた祭礼の絵を、文化九年(1812)に日野商人の中井源左衛門・正治右衛門が日野の絵師・谷田輔長(たにだほちょう)に描かせて寄進したものだそうだ。

馬見岡綿向神社 本殿

現在の本殿は宝永7年(1707)に氏子の寄進により建造されたそうだが、入母屋造・銅板葺で、正面に千鳥破風・軒唐破風をつけ、さらに唐破風造の向拝を設けた非常に立派な建物で、滋賀県の文化財に指定されている。

このような立派な社殿が、権力者ではなく地元の人々によって建てられたことだけでもすごいことなのだが、この神社を舞台に毎年5月2日、3日に行われる日野祭の曳山や神輿の豪華さも半端ではない。曳山が登場した時期は諸説があり、17世紀の中頃とも18世紀前半とも言われているが、いずれにしてもこれらは日野商人達の財力に支えられて、贅の限りをつくして作られたものだという。

ネットで探すと、今年の800年以上の歴史を持つこの日野祭の様子を多くの人がyoutubeで紹介している。
https://www.youtube.com/watch?v=3KjJUqak9wM

5月3日の昼頃には各町内より繰り出された十基以上の曳山が馬見岡綿向神社境内に勢揃いし、神輿も3基繰り出されて、日野の町は祭り一色となる。曳山は実は十六基あるのだそうだが、神輿の当番が回ってきた町は曳山を出さない決まりがあるのだそうだ。

https://www.youtube.com/watch?v=wZzdDZWlf4k

日野祭は神輿も曳山も豪華絢爛だが、お囃子がまたテンポが良くて聴くだけで気分が乗ってくる。
ネットで「馬鹿囃子」がアップされているが、曲目はほかにも「ヤタイ」「オオマ」などいくつかあり、各町から曳山が馬見岡綿向神社に向かう時(上り山)や、曳山を方向転換する時(ぎんぎり回し)、神社に宮入りする時、神社から各町に帰っていく(下り山)時など、場面によって囃子が変わるのだという。町特有の曲もあるようで、曳山を持つ町内では毎年子供からお年寄りまでが集まって、何度も練習を繰り返すことになる。
囃子方だけで16組で約180人がいるのだそうだが、メンバーそれぞれがすべての曲目を暗譜して、全員の息が合うまでは大変な苦労があると思うが、素晴らしい伝統文化であるからこそ、多くの人をひきつける魅力があるのだろう。私もいつか、祭りの時期にこの町を是非訪れてみたい。

馬見岡綿向神社から正明寺(しょうみょうじ:蒲生郡日野町松尾556 ☎0748-52-0227)に向かう。

正明寺参道

正明寺の参道横に略縁起が記されていた。
「戦国の兵火に焼失後、僅かな霊仏のみが守護されていたのを、江戸初期に郷人頓宮宗右衛門が古刹再興を発願して奔走。時の大本山永源寺管長であった一絲文守(いっしもんじゅ)国師に法援を懇請し、その旨が後水尾法皇に奏上されて叡慮を動かした。
時あたかも改築中であった禁裏御所の一棟と白銀が下賜され、正保4年(1647)の頃に正明寺再建が成就。直ちに黄檗宗の大徳龍渓大和尚を開山禅師として迎え、以後、檀信徒を始め近江日野商人達の篤き帰依を得つつ、黄檗専門道場の寺格を整え、近江における黄檗宗の中心寺院としての歴史を刻み、数多くの名僧を輩出してきた。」
この寺も、日野商人がこの寺の発展に寄与したことが読み取れる。

正明寺本堂

上の画像は本堂(国重文)だが、この檜皮葺きの建物は寺伝にあるとおり、時の京都御所の一棟の主要な部材を用いて仏殿風に建造されたものである。
本尊は鎌倉時代の十一面千手観音で、右脇に不動明王、左脇に毘沙門天があり、三体とも国の重要文化財に指定されているが、いずれも御開帳は33年に1度で次は2043年になるようだ。次のURLにモノクロの画像が出ている。
http://kanagawabunnkaken.web.fc2.com/index.files/topics/hibutu2011.html

鎌倉時代の木像大日如来坐像(県文化) が安置されている禅堂(県文化)や、一切経が収められた経堂(県文化)など多くの文化財を持つ寺だが、一般拝観を受け付けているかどうかがよくわからなかった。自宅にもどって調べると湖東霊場二十七名所に選ばれているようなので、電話予約すれば拝観ができたかもしれない。

お昼時になったので、ネットで評判の高いレストラン岡崎に向かう。車で3分程度走れば国道477号線沿いに大きな看板が見える。
https://tabelog.com/shiga/A2503/A250302/25001039/

近江牛を生産している牧場の直営店だが、お手頃なメニューの中から和風ソースのサイコロステーキを選択した。
口の中で溶けるような肉の柔らかさで、割安な価格で至福の時を過ごすことが出来たのだが、ワインが飲めなかったのが残念だった。

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Author:しばやん
京都のお寺に生まれ育ち、大学の経済学部を卒業してからは普通の会社に入りました。
若いころはあまり歴史に興味を覚えなかったのですが、50歳のころに勝者が叙述する歴史が必ずしも真実ではないことに気が付き、調べているうちに日本史全般に興味が広がっていきました。

平成21年にBLOGariというブログサービスでブログを始めましたが、容量に限界がありバックアップもとれないので、しばらく新しい記事を掲載しながら、過去の主要な記事を当初の作成日にあわせて、4か月ほどかけてこちらのブログに手作業で移し替え、平成26年の1月に正式にこのブログに一本化しました。
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